すすむ医療 聴覚検査

難聴の診断に用いる検査には、「どのような・どの程度の難聴があるか」を調べる検査と、レントゲンや画像診断を用いて「難聴の原因がどこにあるか」を調べる検査があります。

三井記念病院では10数項目の聴覚検査の中から、真珠腫性中耳炎など手術治療前に純音聴力検査、語音聴力検査、耳管機能検査の3種類の検査を行っています。

「純音聴力検査は、聴覚検査の中で最も基本的な検査ですが、非常に重要な検査です。この検査は患者さんにオージオメータという器械が発する、日常生活に重要となるヒトの声の高さ(500Hz~2000Hz)を中心に、125Hz~8000Hzまでの7種類の純音をきいてもらい、かすかにきこえる音の大きさを調べます。病気の種類によって低い音がきこえ難くなるもの、高い音がきこえ難くなるものがあり、この検査できこえの程度が正常か異常か、異常があればどの程度のきこえの悪さなのかを判断します。

また、純音聴力検査では気導音と骨導音というきこえ方の違う音の検査を行います。音のきこえ方には2つあります。1つは「気導聴力」といって、音の振動が外耳道を経て鼓膜に達し、鼓膜の振動を耳小骨がその振動を増幅させ、内耳に伝達するもの。私たちはほとんどの音を、この気導聴力できいています。もう1つは、「骨導聴力」という頭蓋骨の振動が直接内耳に伝達するものがあります。頭を叩いたり、歯をカチカチ噛み合せたりするときにきこえる音のことです。この気導聴力と骨導聴力の検査をすることで、きこえの悪さがどの部位の異常によるものかを大まかに判断することができます。

語音聴力検査は、「ア」、「ジ」、「ハ」など語音を一つずつきいてもらい、患者さんがどれだけ正確にきき取り、きき分けられているかを調べる検査です。人がコミュニケーションを取る上で、聴覚は欠かすことのできないものです。言葉を使ったコミュニケーションの場合、声はきこえても何を言っているのかが理解できないのでは意味がありません。

さらに、耳管機能検査は、中耳と鼻(咽頭)を繋ぐ管、耳管の換気能を検査するものです。換気能は、人が高層ビルのエレベータで上昇する時や電車でトンネルに入った時に耳が塞がる感じを、唾をのみ込むことで解消させる能力を調べます。

いずれの聴覚検査も、検査を受ける患者さんの理解と協力が必要な、きわめて心理的な検査です。「きこえ」の感覚は人それぞれ異なり、数値的には正常な範囲でも、患者さんにとっては非常にストレスとなっている場合もあります。純音聴力検査では、患者さんご本人の訴えをいかにオージオグラムに表し、正しい診断と治療につなげられるかという点に力を注いでいます。例えば、慎重なタイプの患者さんであれば「きこえない」と判断した高さの音でも、その音をもう少し長くきかせることで認識できるかもしれません。それをご本人の性格などを考慮せず、私たち検査技師が短絡的に判断しては、患者さんに正しい診断と治療を提供できなくなってしまいます。この点には十分注意を払い、患者さんと医師、双方とコミュニケーションを取りながら解決するように心がけています。」

聴力検査室。広めの空間に間接照明を用いて患者さんの不安を和らげている。
オージオグラム(一例)。
〇は右耳の気導聴力、×は左耳の気導聴力、 は右耳の骨導聴力、コは左耳の骨導聴力を示している。

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』(Vol.05、2013年2月1日発行、三井記念病院 広報部)

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 山崎  葉子 (臨床検査技師・言語聴覚士・臨床検査部 チーフ)

山崎 葉子臨床検査技師・言語聴覚士・臨床検査部 チーフ

1987年
三井記念病院 中央検査部 入職
2015年
臨床検査部 チーフ
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