すすむ医療 人工膝関節単顆置換術

人工膝関節置換術の基本コンセプトは、変形した関節の表面を削って金属のインプラントをはめ込み、間にポリエチレンのインサートを入れるというもので、1970年代には今の術式がほぼ完成しました。

人工膝関節手術は、①人工膝関節全置換術(Total KneeArthroplasty以下TKA)と②人工膝関節単顆置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty以下UKA)に分かれます。

人工膝関節全置換術(TKA)は、膝全体(内側と外側両方とも)を人工関節に置き換えるのに対し、人工膝関節単顆置換術(UKA)は、内側か外側のいずれか片側だけを人工関節に置換します。

人工膝関節全置換術(TKA)は、膝全体を人工関節で置換するために膝の変形が軽度のものから高度なものまで対応が可能です。関節リウマチは、人工膝関節全置換術( T K A )で対応します。そのため人工膝関節全置換術(TKA)が、スタンダードな治療となっています。

三井記念病院では、症例を選んで人工膝関節単顆置換術(UKA)を積極的に行っています。

「人工膝関節単顆置換術(UKA)[写真2]は、膝の半分しか人工関節に置き換えないので、人工膝関節全置換術(TKA)[写真3]に比べて骨の切除量も半分程度で済み、輸血を要することもほとんどありません。自己血輸血の準備も不要です。

ただし、人工関節単顆置換術(UKA)は、どんな患者さんにも対応できるわけではありません。①靱帯がすべて正常である、②関節可動域が良好である、③置換する側のみに変形が限られている、④肥満がない、⑤O脚やX脚の変形が軽いといった制限があります。これは、1970-80年代に行われた手術の反省から出てきたものです。この制限をしっかり守れば、人工関節全置換術(TKA)と同様の成績(90%以上の方が、10年間再手術なし)が得られます。

2000年代に入り、最小侵襲手術(Minimally Invasive Surgery)の導入により傷の大きさは、6-8cmと人工膝関節全置換術(TKA)のおよそ半分で済むようになりました。そのため、術後のリハビリテーションも早い傾向があります。

人工膝関節単顆置換術(UKA)においても、アメリカではPSI(Patient Specific Instrument)が登場しており、人工膝関節全置換術(TKA)と同様に更に正確に、更に侵襲を少なくする方向に進んでいます。

人工関節手術で起こりうる合併症は、人工膝関節全置換術(TKA)と人工膝関節単顆置換術(UKA)で共通です。感染、深部静脈血栓症、神経・血管損傷、創癒合不全などです。いずれも頻度は低いものですが、発生をゼロにはできません。人工関節単顆置換術(UKA)でもしっかりと準備をして手術に備えています。」

(左から)術前/人工膝関節単顆置換術(UKA)/人工膝関節全置換術(TKA)

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』 (Vol.07、2013年7月22日発行、三井記念病院 広報部)

関連リンク

 

廣田 仁聡 (整形外科 科長)

廣田 仁聡整形外科 科長

  • 三井記念病院TOPページヘ
  • 求人一覧
  • お問い合わせ

ページの先頭へ