がんに立ち向かう 肝がん

肝臓は人間の体内で最大の臓器で、成人の場合約1,200~1,500gの重さがあり、担う役割も多様で重要です。

肝臓にできるがんは、「原発性肝がん」と、ほかの臓器から転移した「転移性肝がん」に大別されます。原発性肝がんは、肝臓の細胞ががんになる「肝細胞がん」と、肝内胆管細胞ががんになる「胆管細胞がん」などに分けられますが、肝細胞がんがその90%を占めています。

肝臓は、「代謝」「解毒」「排泄」をつかさどる重要な臓器

―肝臓の役割にはどのようなものがありますか?

肝臓は、代謝の中心となる臓器です。食べたものは胃や腸で消化し吸収しやすい成分に変わり、肝臓に運ばれます。肝臓はそれらを一旦貯蔵し、体内で利用できる形に変換・合成して、必要に応じて体内へ送り出す物質代謝を行なっています。

また、アルコールや薬、食品添加物などの化学物質や体内で作られたアンモニアなど、体に有害な物質を分解して無毒化し、尿や便として体外に排出します。さらに、胆汁という脂肪の消化に必要な消化液を生成しており、健康に生きていくためには非常に重要な働きをしています。

―肝臓が弱った時に現れる症状にはどのようなものがありますか?

肝臓の機能を低下させる主な原因には、ウィルス性によるもの、アルコール性によるもの、また少数ですが非アルコール性の脂肪肝によるものがあります。肝機能が弱ると、食欲不振や倦怠感、疲れやすいといった症状が現れます。

一方で、肝臓は再生能力・代償能力に優れ、ダメージを受けても残った正常細胞が余分に働き、肝臓の機能を維持する仕組みがあります。またダメージがあっても自覚症状が出にくいので『沈黙の臓器』などとよばれ、初期症状があっても風邪などと思い込み、肝臓の異常に気が付かず、診察を受けた際にはすでに、肝がんの一歩手前の肝硬変になってしまっているという場合も多くあります。

肝がんの主な原因はB型・C型肝炎ウィルス感染

―肝がん発症の主な原因は何でしょうか?

肝がんは多くの場合①ウィルス感染→②肝臓に炎症を起こす(肝炎)→③慢性肝炎→④肝硬変→⑤発がん という流れを経て発症します。つまり、主な原因は①のウィルス感染となります。肝がんの原因となるウィルスは、B型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルスです。これらの名称については、ニュースなどで耳にした方は多いのではないでしょうか?

日本では、④の肝硬変の症状が出ている方の約60%がC型肝炎ウィルス感染者、12%がB型肝炎ウィルス感染者、14%がアルコール性によるものとなっています。ただし、B型肝炎ウィルスに感染している場合は、肝硬変になる前に肝がんを発がんする場合があります。

適切な治療で肝がんへの進行を抑制する

―B型・C型肝炎から肝がんに進展させないためにできることは?

B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスに感染すると、最終的に発がんする可能性があるという恐怖はありますが、逆に言うと、ハイリスクグループを設定しにくい他のがんとは異なり、がんになる手前で、自分が肝がんになる可能性が高いハイリスクグループであると自覚できます。ですから、肝がんへの進展を抑制するために最も重要なことは、肝炎ウィルスに感染しているかどうかを医療機関で検査し、感染している場合は専門医療機関を受診し、病態に応じた治療を受けることです。

―B・C型肝炎だと診断されたらどのような治療を行ないますか?

B型、C型いずれの場合も先ほど説明した、①のウィルス感染から、
②肝臓に炎症を起こす(肝炎)→③慢性肝炎→④肝硬変→⑤肝がん
発がんという流れを断ち切ることが今の治療で最も重要視されていることです。

定期スクリーニングにより、患者さんの肝炎が進行しているのか、落ち着いている状態(キャリア)なのかを診断し、必要に応じて抗ウィルス治療を行ないます。

B型肝炎ウィルス感染の場合は、ウィルス量を減らすと発がんリスクが下がることがわかっており、B型肝炎ウィルス感染の目印であるHBs抗原を陽性から陰性にすることが究極の目標になります。抗ウィルス療法としては、核酸アナログという飲み薬とインターフェロンという薬の皮下注射が主流となっています。核酸アナログ治療は副作用が少ないですが、原則として長期間の継続投与となります。一方、インターフェロン治療は副作用がやや多いですが約6か月間という期間限定の治療となります。

C型肝炎ウィルス感染の場合は、B型に比べ、肝炎が落ち着く状態(キャリア)になる人が少なく肝硬変へ進展してしまうリスクが高いのが特徴です。そのため、肝硬変になる前に体内からウィルスを追い出すことが求められています。近年、DAAsと呼ばれる高い抗ウィルス効果を持つ直接作用型抗ウィルス薬の開発が相次いでいます。DAAsはPEG-INFとリバビリンという薬との3剤併用療法とすることで、より強力な抗ウィルス効果を発揮し、治療期間も短縮できるようになりました。

◆B型・C型肝炎の感染経路と進行

◆B型肝炎 抗ウィルス薬の特徴

治療薬 効果 長所 短所
インターフェロン 免疫を高めウィルスの増殖を抑える ・免疫賦活作用を持つ
・投与期間が限定され、中止が容易である
・有効例では治療中止後も効果が持続する
・耐性を誘導しない
・非経口投与である(注射薬である)
・費用が高い
・発熱、脱毛などの副作用が必発である
・遺伝子型により有効性が異なる
核酸アナログ ウィルス遺伝子に作用して増殖を抑える ・経口投与である
・副作用がほとんどない
・強力なウィルス増殖抑制
・遺伝子型による有効性の差はない
・公費助成がある
・投与期間が定まっていない
・投与中止が困難なことがある
・ 治療中止後の再燃が高頻度である
・ 耐性ウィルスが出現することがある
・投与中断や耐性の出現により、増悪をきたすことあがる

◆C型肝炎の治療薬の組み合わせの推移

定期的なスクリーニングで肝がんの早期発見・早期治療

―肝がんを発がんしてしまったらどのような治療を行ないますか?

肝硬変の症状がある場合は、少なくとも3~4カ月に一度の頻度で超音波検査をすることで、たとえ発がんしても肝がんは2㎝以下の大きさで発見できる可能性が高いです。

肝がんが進展していない状態であれば、手術により切除ができます。また比較的新しい治療法ですが、当院では、ラジオ波焼灼療法という、体の外から特殊な針をがんに直接刺し、その針の先端に高熱を発生させてがんを焼き、死滅させる治療法を積極的に行なっています。 ―ラジオ波焼灼療法の特徴を教えてください。

ラジオ波焼灼療法は直径2~3cm以下で2~3個のがんであれば完全に治療できるすぐれた治療法です。

また、ラジオ波焼灼療法は当院では内科医が行ないます。つまり、肝炎や肝硬変への内科的治療を行なってきた医師が、その延長上でラジオ波焼灼療法がおこなえるため、患者さんと担当医が非常に意思の疎通が図れた状態で行える治療であるといえます。

田川先生が解説
「肝がんについてこれだけは覚えて欲しいポイント」

◆肝がんはB型・C型肝炎ウィルス感染しているかどうかを調べることが発がん防止の第一歩
◆30代~40代になったら一度は肝がん検査を受けましょう
◆B型・C型肝炎ウィルスの感染が確認されたら、専門医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう
◆肝がんは早期発見・早期治療が可能ながんです

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』(Vol.08、2013年10月22日発行、三井記念病院 広報部)

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田川 一海 (特別顧問)

田川 一海特別顧問

1973年
東京大学医学部 卒業
東京大学医学部附属病院 研修医
1975年
三井記念病院 内科
1978年
東京大学医学部附属病院 物療内科
1980年
三井記念病院 消化器内科
1997年
消化器内科 部長
2001年
副院長
2017年
特別顧問
学会認定
日本内科学会認定施設における日本内科学会認定医制度の研修医の指導医
日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医(消化器)
日本消化器内視鏡学会認定指導医
日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会認定施設における指導医
日本消化器病学会認定消化器病専門医
日本肝臓学会認定肝臓専門医
日本医師会認定産業医
日本内科学会認定内科医
専門分野
消化器病全般
慢性肝炎
肝硬変
肝癌の診断と治療
食道静脈瘤の内視鏡的治療
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