すすむ医療 無痛ラジオ波焼灼療法

ラジオ波焼灼療法は、超音波検査のガイドにより肝がんに特殊な針を刺し、通電させることでその針の先端部から100℃程度の熱を発生させ、針先端周辺のがんを焼灼する治療法です。1回の治療で約3cmの腫瘍を焼灼することができます。2cm以下の肝細胞がんであれば、切除手術と比較しても長期成績に変わりが無いうえ、患者さんにとってはより低侵襲であるため優れた治療法といえます。

「ラジオ波焼灼療法」を行うには、患者さんに息止めをしていただき呼吸による肝臓の動きを止める必要があるため、一般的には、局所麻酔と軽い鎮静のみという意識のある状態で行われています。しかし、それだけでは術中に患者さんは痛みを感じてしまいますし、痛みにより体動を引き起こしてしまい術者の手元がぶれるなど手技に影響をおよぼしかねません。全身麻酔を用いる場合もありますが、患者さんが全身麻酔に耐えられる身体状態であるかの確認や医療スタッフや全身麻酔の設備も必要なため一般的ではありません。

三井記念病院ではそれらの課題に対し、一般的な薬剤の投薬のみで術中の無痛を可能とする「無痛ラジオ波焼灼療法」を患者さんに提供しています。当院では、患者さんがラジオ波治療室に入られてから、鎮痛・鎮静剤を導入し、全身麻酔に匹敵する状態にします。投与する鎮痛・鎮静剤は特殊なものではなくいずれも一般的に広く使用されている薬剤ですが、容量と投与方法を工夫して、患者さんが寝息を立てるほどの状態にします。この状態で患者さんに呼びかけをしてみて返答が無い状態となったら、針を刺す部分に局所麻酔を行ないます。患者さんの表情や状態を注意深く観察し、眉をひそめたり、苦悶の表情が見受けられたら適宜少量ずつ鎮静剤を追加し、しっかりとした鎮静状態に導きます。そのような状態になりましたら、ラジオ波焼灼療法の針を刺し、通電を開始します。通電を開始してからも患者さんの様子を注意深く観察し、血圧の上昇や呼吸回数が上がるなどが見られたら鎮静剤を追加し、ラジオ波焼灼療法が完了するまで繰り返し行います。

この手法では、患者さんによる息止めをお願いできないため、術者にある程度の経験が必要となりますが、患者さんが痛みを感じられないため呼吸は安定しており、痛みによる体動を起こす状態より安全な手技といえるのではないでしょうか。

術後は特に拮抗薬を用いての覚醒は行わず、眠った状態で病室に戻っていただきます。数時間後に病室にうかがい、手術時の苦痛や感想を尋ねると、「気が付いたら病室に戻っていた」と多くの患者さんが述べられます。手術をしたことそのものを覚えていないほどなので、「無痛・忘却ラジオ波焼灼療法」といえるかもしれません。これまでに実施した約800例ではほぼ100%の患者さんに無痛ないし忘却を達成できています。

肝細胞がんは、肝硬変を母体とするがんであるため焼灼したがん細胞は完治しても、別の場所に再びがんができてしまう繰り返すがんともいえます。そのため、治療も回を重ねることになるので、なるべく痛くなく治療に対して前向きでいられる治療を提供していきたいと考えています。

ラジオ波治療室での治療の様子

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』(Vol.08、2013年10月22発行、三井記念病院 広報部)

関連リンク

 大木  隆正 (消化器内科 科長・内科 医局長)

大木 隆正消化器内科 科長・内科 医局長

職歴

2001年
東京大学医学部附属病院 内科ローテーション

2002年
三井記念病院 消化器内科 医員

2004年
東京大学医学部附属病院 消化器内科 大学院生

2008年
杏雲堂病院 肝臓科 医員

2009年
三井記念病院 消化器内科 医長

2017年
三井記念病院 消化器内科 科長

2018年
内科 医局長(兼任)

 

学歴

2001年
群馬大学医学部 卒業

2004年
東京大学医学部大学院 入学

2008年
東京大学医学部大学院 卒業 医学博士取得

 

受賞歴

2006年
第36回肝臓学会東部会 最優秀演題賞

2007年
APASL(アパスル)Young Investigator Award

2008年
APASL(アパスル)Best Poster Award

2014年
ベストトクターズ社ベストトクターズ2014-15選出

2016年
APASL(アパスル))Young Investigator Award

 

代表論文

Obesity Is an Independent Risk Factor for Hepatocellular Carcinoma Development in Chronic Hepatitis C Patients Clinical gastroenterology and hepatology (CGH) Volume 6, Issue 4, April 2008, Pages 459–464

Visceral fat accumulation is an independent risk factor for hepatocellular carcinoma recurrence after curative treatment in patients with suspected NASH Gut Volume 58, Issue 6, January 2009, Pages 839-844

CT With Hepatic Arterioportography as a Pretreatment Examination for Hepatocellular Carcinoma Patients: A Randomized Controlled Trial The American Journal of Gastroenterology (AJG) Volume 108, April 2013, Pages 1305-1313

他多数

 

所属学会

日本内科学会

日本消化器病学会

日本消化器内視鏡学会

日本肝臓学会

日本門約圧亢進症学会

日本肝癌研究会

日本超音波学会

 

認定医・専門医

内科認定医

肝臓専門医

 

専門領域

肝がんの内科的治療

ラジオ波焼灼療法

肝動脈塞栓術

肝動注療法

肝がん全身化学療法

肝がん定位放射線治療

肝炎の治療

肝硬変の治療

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