大動脈弁狭窄症

心臓は血液を全身に送るポンプの働きをしています。全身に酸素を送り届けた血液(静脈血)は、右心房に帰ってきます。帰ってきた静脈血は、酸素を補給するために右心室から肺へ送られます。肺で酸素を取り込んだ血液(動脈血)は左心房へ戻り、その動脈血は左心室の出口である大動脈弁から勢いよく全身へ送り出されます。

大動脈弁は、送り出した血液が心臓に逆流しないよう、3枚の弁が組み合わさり、大きく開きしっかり閉じる仕組みになっています。

この大動脈弁が加齢などにより石灰化して硬くなり、弁が開きにくくなることで、血液の流れが妨げられてしまう疾患を大動脈弁狭窄症といいます。

AS(大動脈弁狭窄症)の自然歴[1960年代]と[2010年代]の変化

加齢や動脈硬化に起因し、高齢者に多い疾患

―大動脈弁が硬くなる原因は何でしょうか?

大動脈弁狭窄症の発症要因は、今と昔では変わってきています。30年ほど前はリウマチ熱による炎症が原因で発症する場合が多くありましたが、近年は加齢・動脈硬化によるものが増え、70歳~80歳の高齢者に多く発症しています。また3枚で構成される大動脈弁が生まれつき2枚しかない先天性の2尖弁が原因となり、60歳を過ぎたあたりから発症する場合もあります。いずれの原因であっても、最終的な症状はほぼ同じで、弁にカルシウムが付着し石灰化することで弁が互いに癒着し硬くなり、本来であれば大きく開く弁が、小さくしか開かず血液の流れが制限されてしまいます。

大動脈弁狭窄症の症状を老化と思い込んでいる方が多い

―大動脈弁狭窄症の症状はどのようなものがありますか?

大動脈弁狭窄は軽度の場合、ほとんど自覚症状がありません。しかし狭窄の程度が進むと、体を動かしたときに胸の痛みを感じたり、運動時に息苦しさを感じたり、足のむくみ、失神などの症状が現れます。このような症状が出た後も治療をしないでいると2年から5年で死に至るとされています。

先ほども述べましたが、近年この病気は高齢者に多く、大動脈弁狭窄症の症状が出ているにも関わらず、病気では無く単なる老化と捉えてしまっている高齢者が非常に多いのではないかと考えられます。運動したら胸が痛くなるから外出を控える、お風呂に入ると胸が苦しくなるからあまり入らなくなる、など知らず知らずに活動量や活動範囲が狭まり、2~5年の間に老衰であったかのように亡くなっている方がいらっしゃると思います。

―大動脈弁狭窄症を放置しておくとどのようなリスクがありますか?

一度硬化した弁が再び軟らかくなることは残念ながらありません。放置しておくと生活の幅を縮め、寿命を短くします。また、心臓の機能が低下しているため、他の病気が見つかった際に手術に耐えられる身体では無くなっている場合もあります。極端な例ですが、全身麻酔に耐えることが難しいため膝関節の手術も受けられないなど、治療の選択肢を狭めることにつながります。

まずは健康診断で胸の音を聞いてもらいましょう。

―大動脈弁狭窄症だと判断するにはどうしたら良いでしょうか?

定期的な健康診断の際に、医師に心臓の音を聴診器で聞いてもらえば、大動脈弁狭窄症の可能性があるかないかがわかると思います。初期段階であれば、適切な医療機関で定期的に経過を観察し、医師が治療の必要性があると判断した際に治療を受けてください。

原先生が解説
「心臓に良い生活」

若いうちから動脈硬化症にならないよう、偏った食事や運動不足、過度な飲酒・喫煙など生活習慣を見直していただきたいですね。高齢の方は、規則正しい生活を心がけていただき、散歩やラジオ体操など軽めの運動を毎日取り入れていただくのが良いと思います。

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』(Vol.09、2014年1月22日発行、三井記念病院 広報部)

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原 和弘 (副院長・内科 部長)

原 和弘副院長・内科 部長

1992年
三井記念病院 循環器センター 内科 科長
2000年
循環器内科 部長
2012年
内科 部長(兼任)
2013年
内科 上席部長
2014年
副院長
内科 部長(兼任)
学会認定
日本内科学会認定施設における日本内科学会認定医制度の研修指導医
日本心血管インターベンション治療学会認定名誉専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本内科学会認定内科医
日本医師会認定産業医
専門分野
冠動脈および末梢動脈インターベンション
デバイス治療
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