すすむ医療 膵頭十二指腸切除術

腹部手術の中でも身体への負担が大きなものの一つである膵頭十二指腸切除術。これは、膵臓の膵頭部に病変がある場合に施す手術で、膵がんの他に胆管がんに対しても行います。膵頭部は腹部の中でも血管・消化管・胆管が複雑に交差し、十二指腸や胆管と解剖学的に連結しているため、病変がある膵臓だけを切除するというわけにはいかず、十二指腸や胆管も一緒に切除することになります。

「膵頭十二指腸切除術は、病変を含めた広範囲にわたる臓器の切除・摘出と、消化管の再建という2つの手順で構成されます。

まず、標準的な膵頭十二指腸切除術では、膵頭部(膵臓右半分)・十二指腸から空腸初部・胆管・胆のう・胃の約1/3(幽門側)を切除します。門脈への浸潤程度によっては、門脈合併切除を追加することもあります。次に切除した部分をつなぐ再建ですが、私は、Child法と呼ばれる方法を基本に、膵臓→胆管→胃の順に空腸と吻合します。

膵がんの手術は切除する部分が多く、患者さんへの身体の負担が非常に大きなものです。ですから、医師はそれぞれに工夫を重ね、患者さんにとってより低侵襲な方法を常に見つけるよう努力しています。三井記念病院は2013年7月より、膵頭部領域のがんに対する膵頭十二指腸切除術では、前方アプローチによる上腸間膜動脈周囲リンパ節の郭清を先行した術式を多く行っています。また、消化管の再建方法にも多くの工夫を加えて、術後合併症発生率を低くする努力を続けてきています。

術式の工夫に加え、術後なるべく早くから患者さんに口から食べてもらうようにしたり、身体にたまった膿や血液を排出するドレーンという管もなるべく早めに抜去する術後管理を行っています。その結果、患者さんの術後在院期間がこれまでの平均41日から16日へと飛躍的に短縮させることができました。術後早期に退院することは、患者さんやご家族に不安な面もあるかと思いますが、やはりご自宅の方が心身共にリラックスできる上に、いい意味でのリハビリにもなりストレス軽減につながると考えています。また、術後の補助化学療法が早期に開始できることにもなります。

膵がんは、術後の転移も多く治癒が難しい病気ではありますが、膵がん治療に携わる医師は皆、患者さんにとってより良い方法を常に追求しています。手術に関しても輸血する頻度、術後在院日数、合併症率、生存期間、いずれも徐々に改善・向上してきています。ですから、患者さんには決してあきらめることなく可能な限り前向きに治療と向き合っていただきたいと思っています。

膵頭十二指腸切除術(切除手順)

  1. 胃を離断する
  2. 小腸を離断する
  3. 総肝管を離断する
  4. 膵臓を離断する

膵頭十二指腸切除術(再建手順)

  1. 膵臓を吻合する
  2. 胆管を吻合する
  3. 胃を吻合する
  4. 小腸を吻合する

出典:三井記念病院『ともに生きる』(Vol.13、2015年1月19日発行、三井記念病院 広報部)

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小林 隆 (消化器外科 部長・がん診療センター センター長)

小林 隆消化器外科 部長・がん診療センター センター長

1992年
東京大学医学部 卒業
東京大学医学部附属病院 外科 研修医
1993年
社会保険中央総合病院 外科
1995年
東京大学医学部 肝胆膵外科・人工臓器移植外科
1998年
竹田綜合病院 外科
1999年
東京大学医学部 肝胆膵外科・人工臓器移植外科
2002年
公立昭和病院 外科
2011年
都立広尾病院 外科
2013年
三井記念病院 消化器外科 科長
2014年
消化器外科 部長
2015年
がん診療センター センター長(兼任)
学会認定
日本外科学会認定医・専門医・指導医
日本消化器外科学会認定消化器外科専門医・指導医
日本消化器外科学会認定消化器がん外科治療認定医
日本肝胆膵外科学会認定肝胆膵外科高度技能指導医
ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)
専門分野
消化器外科
腫瘍外科(特に肝胆膵外科)
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