片側顔面痙攣・三叉神経痛・舌咽神経痛

三井記念病院は伝統的に非常に多くの片側顔面痙攣、三叉神経痛、舌咽神経痛の患者さんに対する治療を行っており、多くの治療実績とノウハウを持ちます。いずれの病気もいくつかの治療手段がありますが、手術によってのみ根治可能な病気であるため、これらの病気については手術以外の治療も含め、脳神経外科が担当しています。今回の特集では病気についての理解を深めていただければと思います。

いのちには関わらないが、日常生活に支障をもたらす病気

― これらの病気にかかる原因はなんですか?

片側顔面痙攣、三叉神経痛、舌咽神経痛、これらの病気はいずれも「神経を血管が圧迫すること」で起こるため「神経血管圧迫症候群」とも呼ばれています。

脳の深部である脳幹部(図の赤の部分)から神経(顔面神経、三叉神経、舌咽神経)が出る部分で血管が神経を圧迫し、神経が過敏になる、または異常に興奮してしまうことで起こります。

しかし、なぜ血管がそれらの神経を圧迫してしまうのかという原因については、現時点では解明されていません。

― 症状が進行すると生活にどのような支障が起きますか?

いずれも不規則に痛みや症状が起こるため、病気と認識するに至らず、突発的に来る原因不明の症状に悩まされストレスを抱えている患者さんが多いと思います。

片側顔面痙攣の場合、他人からの見た目を気にされるあまり、人と会うのを避けたり、無意識に生活や仕事に制限を設けたりすることがあります。三叉神経痛、舌咽神経痛の場合、本格的に発症すると耐え難い激痛となります。痛みのために食事がとれなくなったり、いつ痛みが来るかわからない恐怖から外出などを控えたりすることがあります。

いずれの病気も本格的に症状を発症している患者さんたちには「周囲の人達が思っている以上に困っている」という現実があり、命に関わる病気ではありませんが、非常につらい生活を強いられます。

●主な症状

片側顔面痙攣

顔の半分が自分の意思とは関係なくピクピク動いてしまう。目の下から始まり、目の周囲に広がり、口、頰までひきつるように進行していく。

三叉神経痛

突発的で強い痛みが顔の半分に起きる。顔の下半分に起こることが多いが、時に額の方まで痛みが拡散する。食事、歯磨き、化粧、髭剃りなどで誘発され、発作時のみ痛いのが特徴。

舌咽神経痛

片側の喉に限局した発作的な痛み。飲み込むときに痛むのが特徴。三叉神経痛同様、発作時以外はあまり痛みを感じない。

適切な診断と治療選択のために

―異常を感じたらどの診療科にかかればよいですか?

いずれの病気も発症したばかりの頃はどの科にかかればよいかわかりにくいと思います。かかりつけ医がいらっしゃればまずはそこで相談してください。

片側顔面痙攣であれば、眼の周囲から症状が始まるため、眼科や耳鼻科にかかる患者さんが多いと思います。三叉神経痛、舌咽神経痛であれば、歯科、口腔外科、耳鼻科などではないでしょうか。

片側顔面痙攣、三叉神経痛、舌咽神経痛、いずれも症状は異なりますが、血管への圧迫を減少する手術を行えば完治することができます。しかし、最初から頭の手術を想像し、脳神経外科にかかることを考える患者さんは少ないかもしれません。それでも症状で困り続けている場合には、より専門的な脳神経外科やペインクリニック科を受診されることをお勧めします。

―病気の診断はどのように行いますか?

同じような痛みや症状でも全く異なる病気という可能性もあるため、これらの病気の診断には、問診が非常に大切です。患者さんから直接、どのような症状がどんな時に起こるか、痛みのレベル、症状の継続時間、頻度など細かく聞かせていただきます。

問診から神経の血管圧迫が疑われたら、それを確認するためにMRI検査を受けていただきます。その両方を合わせて診断します。

―治療はどのように進められますか?

脳神経外科を受診しても必ず手術するわけではありません。当院には手術以外の治療で通院されている患者さんも多数いらっしゃいます。まずは病気への正しい理解が必要であり、その上で患者さんにあった適切な治療を選択をしていくことが大切です。

先に述べた通り、これらの病気の原因は脳幹部付近にあり、その部分を手術で治療することが唯一の根本治療です。それ以外の治療は、症状をいかに緩和するか、という観点で行います。

それを正しく理解し、自分にとって最善だと思う治療を医師と一緒に考え、患者さん自身が納得して選択してください。

― 手術以外にはどのような治療法がありますか?

片側顔面痙攣の治療には、手術の他に薬物治療、ボツリヌス毒素注射がありますが、薬物治療が非常に効果的であるという証拠はありません。ボツリヌス毒素注射は顔面の痙攣している部位にボツリヌストキシンを注射するもので、ボツリヌストキシンの筋肉の緊張をやわらげる効果により、片側顔面痙攣の症状が緩和されます。効果は3~4か月で切れるため、繰り返し行う必要があります。

三叉神経痛、舌咽神経痛の治療には薬物治療、ブロック療法、放射線治療、手術治療があります。片側顔面痙攣とは異なり、こちらはまずは薬物治療を行います。テグレトールという内服薬が効果を発揮することが多く、それを継続して痛みを緩和している患者さんはたくさんいらっしゃいます。しかし眠気など副作用にも注意が必要な薬です。ブロック療法は神経に直接的に麻酔薬を注入し、一時期的に神経を麻痺させて痛みを感じなくさせる治療法で、ペインクリニックなどで行われています。放射線治療は神経自体に放射線をかけることでブロック療法同様に神経を麻痺させることを意図した治療です。

―手術における三井記念病院での治療の特徴を教えてください?

三井記念病院は、豊富な治療経験から、患者さんをいかに安全・効果的に、なおかつ短期の入院期間で治療できるか、ということに関して高いレベルにあると思います。

また、内科をはじめとする他科との連携もよく、持病がある方の対応も可能です。入院日は手術前日で、それまでに外来通院で一通りの検査を済ませます。入院期間は10日間に設定していますが、これは傷の抜糸まで終わらせてという設定なので、経過が良い患者さんは10日を待たずして早めに退院し、外来で抜糸をすることも可能です。

手術室、入院病棟の看護師はこの手術や術後管理に精通しており、手術室から手術後まで患者さんに対するきめ細かいケアを提供できる体制を整えていますので、常に安心して手術をお受けいただけます。

中口先生が解説

「当院は、経験豊富な医師と、各診療科との連携体制が整っています。

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』(Vol.14、2015年4月20日発行、三井記念病院 広報部)

関連リンク

中口 博 (脳神経外科 部長)

中口 博脳神経外科 部長

1989年
山形大学医学部 卒業
東京大学医学部附属病院 脳神経外科 研修医
1995年
諏訪中央病院 脳神経外科 医長
1997年
東京厚生年金病院 脳神経外科 医長
1999年
陽正会寺岡記念病院 脳神経外科 医長
2004年
帝京大学医学部附属市原病院(現 帝京大学ちば総合医療センター) 脳神経外科 講師
2010年
帝京大学ちば総合医療センター 脳卒中センター 准教授
2012年
三井記念病院 脳神経外科 部長
学会認定
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医・指導医・学術評議員
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
日本脊椎外科学会認定医
専門分野
脳卒中
脊椎病
脳腫瘍
頭部外傷
神経放射線画像研究
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