すすむ医療 コンピューター支援手術

腰椎脊柱管狭窄症を抱えている患者さんの中には、腰椎がずれてしまった「すべり症」を併発している場合があります。  すべり症がある場合は、椎骨と椎骨を連結する支持部分がなくなってしまっているため、手術の際に、金属片で固定することが必要になります。腰椎や頸椎など、中に大事な神経が通る部位の手術において、より安全性を高めるために導入されたのが、コンピューター支援手術です。

「腰や首の骨には、重要な血管や神経系が狭い部分に数多くめぐっています。すべり症を併発した腰部脊柱管狭窄症の手術では、圧迫している部位の切除に加え、辷りを起こしている椎骨と他の椎骨とを金属片(スクリュー)を用いて接続することが求められます。ごく狭い部分での手術になるため、少しでも行き過ぎると血管や神経系を傷つけることに繋がります。そこで、三井記念病院では、術前に撮影した患者さんの患部のCTスキャンデータをコンピューターで3Dモデリング化し、正確なシミュレーションを行い、その結果を用いた手術、『コンピューター支援手術』を行う場合があります。

膨大なデータでも正確に解析できる、というコンピューターの特性を活かし、患者さんの患部の3Dモデルデータからスクリュー挿入の方向や角度、そして深さを解析し、適切な数値を導き出します。そして、モデル上でスクリュー挿入のシミュレーションを行います。このシミュレーション結果を元に実際の手術の綿密な計画を立て、手術に臨みます。

このコンピューター支援により、今まで勘や経験だけが頼りだった手術に“正確な地図“という強力なアイテムが加わり、より安全性の高い手術や、難度の高い手術にも対応できるようになりました。もちろん、コンピューターと言えども万能ではありませんので、術者の豊富な経験と正確な技術が必要となります。当院でもあくまでもコンピューターによる解析は「裏付け」として用いるようにしています。

コンピューター支援手術はもともと脳神経外科手術の分野で活躍してきました。それが発展的に、首や腰の整形外科手術にも用いられるようになってきました。まだ整形外科の分野に適用している医療機関は多くありませんが、今後は、より安全かつより信頼性の高い手術を求めて利用が増えるのではないかと予想されています。」

出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる』(Vol.15、2015年7月23日発行、三井記念病院 広報部)

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川崎 洋介 (整形外科 科長)

川崎 洋介整形外科 科長

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