医療最前線 大腸がん

1.大腸とはどんな臓器? どんな役割?

大腸は、水分、塩分を吸収し便を固くしつつ蠕動(ぜんどう)運動により直腸に向かって移動させます。また1グラムあたり約100億個以上の腸内細菌が生息し、外部から侵入した病原細菌が腸内で増殖するのを防止する役割を果たしています。

2.大腸がんを発症するとどのような症状が出ますか?

早期がんでは自覚症状はなく、検診などをきっかけに見つかることがほとんどです。進行がんでは、がんが存在する部位により症状が異なります。右側大腸がんでは、管腔が広いために症状が出にくく、かなり進んではじめて腹部のしこりとして触れたり、腹痛などが現れます。左側大腸がんでは、便に血が混ざることが大事な症状です。特に直腸がんでは、肛門に近いために痔と間違えられるような出血があり、痔と思われて放置されることもあります。また管腔が狭いので、通過障害による腹痛、便が細くなるなどの症状が現れます。

3.治療法は?

大腸がんの主な治療法には、内視鏡治療、手術治療、化学療法、放射線療法などの方法があります。

がんが粘膜内にとどまっている早期がんでは、転移の可能性が非常に低くがんの部分だけを切除することで完治が得られます。内視鏡的に切除する方法が代表的です。深く浸潤した場合は手術が原則です。このようながんでは、周囲に存在するリンパ節に転移を起こすことがあるため、腸管とともに周囲のリンパ節をすべて切除します。手術時にすでに大腸以外の臓器に転移が存在する場合や、再発した場合には、手術だけでなく、化学療法、放射線療法、緩和医療などの選択肢があります。

4.検査方法は?

簡便な方法として直腸指診と便潜血反応があります。直腸指診は肛門から直腸へと指を入れて、腫瘍がないかを直接触って確かめる検査です。この方法は自己診断も可能で、直腸がんの約80%は直腸指診によって見つかるといわれています。便潜血反応は大便中に含まれる微量の血液を検出する方法です。簡便でありますが、早期がんの診断には必ずしも適切ではありません。出血するということは早期ではなく、進行がんの所見であるからです。

大腸全体を見る代表的検査は注腸造影と内視鏡です。注腸造影はバリウムと空気を肛門から注入し、大腸のレントゲン撮影を行う検査です。レントゲン写真では、がんの位置や大きさ、大腸の状態などを確かめることができます。内視鏡は先端に小型カメラを携帯した管状の医療機器を肛門から入れて行う検査です。大腸全体を詳細に見ることができ、がんや大腸の状態を詳しく調べることができます。また細胞の採取や小さな病巣を切除することもできます。

出典:『三友新聞』(2015年10月8日発行、三友新聞社)

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戸田 信夫 (内科部長・消化器内科 部長)

戸田 信夫内科部長・消化器内科 部長

1990年
東京大学医学部 卒業
2009年
三井記念病院 消化器内科 部長
2021年
内科部長(兼任)
学会認定
日本内科学会認定施設における日本内科学会認定医制度の研修医の指導医
日本内科学会認定内科医
専門分野
各種消化器悪性腫瘍の診断治療
上部下部消化管内視鏡検査
胆道膵疾患の内視鏡治療
腹部画像診断
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