医療最前線 胃がん

1.胃はどんな臓器? どんな役割?

胃は食道につづいた消化管で、上腹部のほぼ中央に位置します。胃の役割は食物の消化です。胃の中に食物が入ってくると、収縮運動により食物がすりつぶされ、ペプシンという酵素により分解されます。胃は食物と一緒に入り込んだ細菌を胃酸で殺菌する働きももっています。

2.胃がんを発症するとどのような症状が出ますか?

一般的には早期の胃がんには症状が無く、がんの進行によって症状が出現します。

代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸焼け、吐き気、食欲不振などがありますが、これらは胃がん特有の症状ではなく、胃炎や胃潰瘍でも起こります。検査をしなければ分かりませんので、これらの症状があればまず医療機関を受診することが重要です。

3.治療法は?

内視鏡治療、手術、化学療法などの方法があります。

胃がんを治癒させるためにはがん細胞をすべて取り除く必要があります。胃がんの広がりが浅く粘膜内にとどまり、かつ小さく分化度(細胞が分裂して成熟する進み具合)がよい場合は転移の可能性が非常に低く、内視鏡治療でがんの部分だけを切除することで完治が得られます。手術は胃の切除と同時に、決まった範囲のリンパ節を取り除きます。これは胃周辺のリンパ節に転移した胃がんであれば手術で取りきろうというものです。肺や肝臓に転移するなど手術で切除出来る範囲を超えた胃がんに対しては化学療法が選択されます。抗がん剤を飲んだり注射することにより、胃がんを小さくしたり大きくなるのを抑える治療です。ただ使う薬が必ず効果的とは限らず、現在の時点では抗がん剤のみで胃がんを完全に治療するのは難しい状況にあります。

4.検査方法は?

胃の検査方法として一般的なものは、「胃X線検査」、「胃内視鏡検査」、「ペプシノゲン検査」、「ヘリコバクターピロリ抗体検査」です。胃X線検査は、バリウムと発泡剤を飲み、X写真を撮影し胃の中を観察する検査です。胃潰瘍や良性ポリープも発見されます。胃内視鏡検査は先端に小型撮像素子が搭載された内視鏡を鼻や口から挿入して、胃の中を観察する検査です。胃がんかどうか疑わしい病変があった場合には、“生検”といって、その部位を少量採取して顕微鏡で詳細に調べる検査を行います。

ペプシノゲン検査やヘリコバクターピロリ検査は胃がんを直接見つけるための検査ではなく、胃がんになるリスクを知るための検査です。陽性と判定された方は精密検査を定期的に受けることが望まれます。

出典:『三友新聞』(2015年12月10日発行、三友新聞社)

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戸田 信夫 (内科部長・消化器内科 部長)

戸田 信夫内科部長・消化器内科 部長

1990年
東京大学医学部 卒業
2009年
三井記念病院 消化器内科 部長
2021年
内科部長(兼任)
学会認定
日本内科学会認定施設における日本内科学会認定医制度の研修医の指導医
日本内科学会認定内科医
専門分野
各種消化器悪性腫瘍の診断治療
上部下部消化管内視鏡検査
胆道膵疾患の内視鏡治療
腹部画像診断
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