医療最前線 腰部脊柱管狭窄症
1.腰部脊柱管狭窄症とは?
タレントの“みのもんた”さんが手術をお受けになって以来、知名度が向上した疾患です。腰骨(腰椎)には竹輪のようなトンネルが内部にあり(脊柱管)、老化に伴って内部構造が狭くなっていき、そこを通過する神経の束が圧迫されることで起きる疾患です。坐骨神経痛で有名な腰椎椎間板ヘルニアが若年者に多いのと異なり、比較的高齢の方に起きやすい疾患です。
2.どのような症状がでるか?
典型的な症状は、“間欠跛行(かんけつはこう)”と呼ばれ、安静時には無症状でも、歩き出してしばらくすると足やお尻の周りに不快なしびれが生じ、歩くのを止めて腰を前にかがめたり、しゃがみこんだりして、じっと休んでいると回復する、というものです。通勤中であれば、毎朝、駅にたどり着くまでに何回も休まなければならなくなります。重症化すると歩かなくとも常に足がしびれっぱなしになったり、足の筋力が落ちてきたりします。排尿障害をきたすこともあります。
3.検査方法は?
整形外科を受診していただき、本疾患を疑う場合には、MRIという画像検査を行って診断をつけます。紛らわしい疾患に下肢の動脈の閉塞がありますので、正確な診断の必要性や重症度に応じて、一般の整形外科医から脊椎の専門医への受診を勧められることがあります。
4.治療法は?
症状が軽いうちは、神経の血行促進薬を使用します。ブロック注射といって、患部に少量の薬を注入することを行うこともあります。また、我慢して長い距離を歩き通すことを控えるという生活スタイルで当面しのぐことができます。自転車では症状が悪化しませんので、下肢の運動を兼ねてお勧めできます。一度に歩ける距離が極端に短くなった場合には、脊柱管を広げる手術を行います。
5.三井記念病院の脊椎手術の特徴は?
腰椎椎間板ヘルニアの手術では内視鏡を使用しますが、本疾患においては、しっかり脊柱管を拡大するために顕微鏡を使用した手術を行います。ほとんど出血させずに手術を行えますので輸血は全く不要です。手術の翌日から歩行練習を開始し、入院期間は2週間ほどです。ゴルフなどの軽いスポーツは手術後3カ月を過ぎると許可しています。本疾患のなかで、腰椎のズレを伴っている場合には、チタン製の金属で不安定な箇所を固定することがあります。その場合、コンピュータ支援による高精度のテクニックにより、金属挿入による神経損傷を起こさないようにしています。
出典:『三友新聞』(2016年2月25日発行、三友新聞社)