糖尿病

糖尿病は、慢性的に高血糖が続く状態のことです。食事により体内にブドウ糖(血糖)が取り込まれ血糖値が上がると、正常な場合は、膵臓からインスリンというホルモンが分泌し、インスリンの働きによりブドウ糖がエネルギーとして利用されるなど速やかに処理されるため、血糖は一定量に保たれます。しかし、インスリンの作用が弱いとブドウ糖を上手く利用できず、血糖値を下げられない状態が続いてしまいます。

高血糖の状態が続くと、全身の血管が障害をうけ、動脈硬化や腎症、神経症などの合併症を引き起こす危険性があります。

2型糖尿病は食べ過ぎと運動不足が原因となる生活習慣病

―糖尿病には1型と2型がありますが、その違いを教えてください。

1型糖尿病は、典型的には若年で急性発症し、自己免疫に起因する事が多い糖尿病です。膵臓がインスリンをほとんどつくることができない場合が多いため、治療にインスリン注射が必須となります。一方、2型糖尿病は、食べ過ぎ・運動不足など生活習慣に起因する、メタボリックシンドローム型の糖尿病が多いです。主に中高年以降にみられますが、近年は食習慣の変化などで若年層の発症も増加しています。日本の糖尿病の患者さんの約95%は2型糖尿病と言われています。

―糖尿病の患者さんは増加傾向ですか?

ここ10年、糖尿病の有病率は横ばい状態です。ただし、男女とも加齢とともに有病率は増加し、男性の場合、40歳台では6%程度ですが、60歳以上になると20%に上がります。女性は60歳以上で10%を上回り、年齢別で見ると男性より10年遅れで有病率が増えています。この傾向から中高年の男性は2型糖尿病に要注意と言えます。

糖尿病の症状はほとんどなく、無自覚のまま重度な合併症を発症する

―糖尿病になるとどのような症状が出るのでしょうか?

重症の高血糖では、のどの渇き、尿の量が多くなる(多尿)、体重減少などの症状があらわれますが、初期の糖尿病や時間をかけて重症化した糖尿病は、ほとんど症状があらわれません。これが糖尿病の怖いところです。「痛い」や「辛い」といった自覚症状があまりないため、治療しないで放置してしまい、その間に合併症が進み、命に係わる状態になってしまっているという危険性があります。

―なぜ放置しておくと合併症が進むのでしょうか?

血糖値が高い状態のまま生活を続けると、血管が高血糖の影響で傷ついてきます。比較的太い動脈が障害を受けて、血管内部に血栓が付着し血行が悪くなった状態を動脈硬化と言いますが、それだけでなく毛細血管のような細小血管にも障害を起こすのが糖尿病による血管障害の特徴です。動脈硬化により狭心症・心筋梗塞、脳梗塞などが起きます。また細小血管障害により、いわゆる糖尿病の三大合併症(網膜症・腎症・神経症)が起き、放置すると失明・透析・足壊疽につながります。神経は特に痛みを感じる知覚神経が障害を受けやすく、血流障害や感染により皮膚病を起こしているのに、神経障害のため痛みを感じることができなくなり、結果として痛くないため皮膚病を放置してしまい壊疽を起こすという悪循環を招くことがあります。

このように、糖尿病はただ単に“血糖値が高い状態が続く”病気ではなく、血糖値が高い事により全身の血管が障害を受ける“血管病”であると言えます。

糖尿病そのものでは「痛い」や「辛い」症状がないため、治療をおろそかにしがちですが、糖尿病は放置しておくと血管障害により脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化など重度の合併症を引き起こしてしまう、ということを覚えておいてください。

糖尿病が疑われたら、放置せず、必ず生活改善を実行しましょう

―糖尿病を早期発見するにはどうしたら良いですか?

若いうちは、通常の健康診断をきちんと受け、万が一尿検査や血液検査で異常がでたら放置せず、必ず再検査を受けてください。中高年になったら、空腹時の血糖値を測る検査を追加しましょう。血糖値の正常値は、空腹時で70~110㎎/dl、食後でも140㎎/dl以下が正常です。また、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査で測定できる数値があります。HbA1cとは、赤血球に含まれ酸素を運ぶ役目を果たしているヘモグロビンのうち、ブドウ糖が結合したものの割合(%)を測定した数値です。HbA1cの数値を調べれば、過去1~2か月の血糖の平均的な状態を知ることができます。HbA1cが基準値である6.2%未満をこえ、6.5%以上になると糖尿病の疑いがあります。

血糖値やHbA1cが基準値を越えている場合は、特に自覚症状が無くても、医療機関を受診し、治療を開始しましょう。しつこいようですが、ほっておくと命に係わります。

―糖尿病の治療はどのようにすすめられますか?

2型糖尿病は生活習慣に起因するため、ご自身が中心となって進める、食事療法と運動療法が基本となります。

3度の食事をバランスよく食べる、ジュース、菓子など砂糖が多く含まれる食品を控える、夜遅くに食事(特に炭水化物)を摂らない、野菜をしっかり摂るなど、身体に良いとされるバランスのとれた食事をし、有酸素運動と軽い筋トレなどの運動を続け、生活改善を行います。

食事や運動に気を付けても改善しない場合は、薬物療法を併用します。

―薬物療法はどのようなものですか?

糖尿病はそもそもインスリンの作用が弱いことで起こるため、インスリンの分泌を増やす薬やインスリンの働きをよくする薬を服用していただきます。

近年は、インクレチン製剤という高血糖の状態でのみインスリンの分泌を促進する薬が登場しました。インクレチン治療は、低血糖のリスクが無い事に加え、治療に伴う体重増加のリスクを抑制する利点もあるため、2009年に登場してから急速に普及してきました。

患者さん自身が生活を変化させ糖尿病を治しきることを目標に!

―三井記念病院の糖尿病の治療の特徴を教えてください。

当院は、糖尿病が悪化しないように治療するのではなく、「治しきりましょう!」という目標、つまり薬に頼らないで生活できるようになりましょうという目標を患者さんとともに掲げるようにしています。糖尿病は各患者さんの生活習慣と密接に係わるため、患者さんの意識や生活スタイルを徐々に改善できるように患者さんに合わせた指導を続けています。 

また当院では、糖尿病リレー外来を設け、患者さんご本人と地元のかかりつけ医、そして当院が連携することで、外来治療と入院治療を効果的につなげ患者さんの治療中の生活の質をなるべく維持できるよう努めています。

五十川先生が解説
糖尿病にならない生活

  • 普段の食生活を見直しましょう。炭水化物は体内でブドウ糖に変わるため、炭水化物が多い食事は糖尿病の原因になります。
  • 夕食がどうしても遅くなる生活の方は、おにぎりなどの炭水化物だけは19時ごろまでに食べ、帰宅後はおかずだけにするなどを心がけましょう。
  • 食べたいだけ食べていると、太るだけでなく、糖尿病の危険も迫ってきますよ。
出典:三井記念病院広報誌『ともに生きる 』(Vol.18、2016年4月22日発行、三井記念病院 広報部)

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すすむ医療「糖尿病動脈硬化」

五十川 陽洋糖尿病代謝内科 部長

1995年
東京大学医学部 卒業
2003年
三井記念病院 内科
2005年
糖尿病代謝内科 医長
2008年
糖尿病内科 科長
2011年
糖尿病代謝内科 部長
学会認定
日本内科学会認定総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会認定専門医・指導医
専門分野
一般内科
糖尿病
内分泌
代謝
栄養

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