学びの環境を整えて、志ある君を待つ
ジェネラルから専門まで、贅沢に学んでほしい
当院の教育の目標は、患者さん一人ひとりの全体を診ることができる、幅広いフィールドをカバーできる医師の育成です。そこで、初期研修時から、臓器・疾患別の勉強と、複数の疾患を持つ患者さんなどを総合内科的に診ることを同等に行います。一般的には、専門性を追求し始める時期の後期研修においても、限られた狭い分野に偏った学びのみではなく、どんな患者さんにも対応できる総合力を身につけられる機会を設けています。初期、後期を通して、ジェネラルと専門の両側面を贅沢に学べる――そんなプログラムが当院の研修の特徴です。
当院は長い歴史を持つ病院で、さまざまな患者さんが来院し、多彩な疾患に対して質の高い医療を提供してきた実績を持ちます。その中で、すぐれた医師たちが後進を育て、育てられた医師たちが次にはまた指導する立場に――といった教育が何世代もつづいてきました。実は、その集大成が、若い医師向けのマニュアルとしてまとめられ出版されています。1989年に初版が発行され、2015年の第10版まで、時代に即して改訂を重ねてきた『内科レジデント実践マニュアル』(文光堂)がそれです。一病院の研修マニュアルが一般書籍として出版社から発刊されることは、あまり例のないことで、当院のハイレベルな医療と教育の証と自負しています。
精神面のサポート体制も充実
贅沢に学べる環境があるとは、一方で体力面・精神面ともにハードな日々がつづくことも意味しています。悩みや問題を抱えてのバーンアウトなどを防ぐため、病院として研修医たちを支える体制づくりには心を配っています。たとえば、研修中の全員に対して3ヵ月に一度、教育研修部のスタッフがヒアリングを行い、必要な場合には、すぐに研修指導責任者や私のところに情報が上がってきて、何がしかの対応をする仕組みをつくっています。どんな些細な悩みも放置はしません。
また、年に3回は研修医全員と指導医を集めての食事会を実施し、学ぶ側と教える側の皆がざっくばらんに話し合える場を設けています。若手医師からの希望により医局長クラスの中堅医師が食事や相談の場を持つ際には、病院からの補助金が下りるというルールもあります。充実した研修のためには、メンタル面でのサポートがいかに大事かを十分に理解し、さまざまな施策を実施しています。
新専門医制度に対応するシステムを構築
今、新専門医制度にどのように対応するかに多くの病院が頭を悩ましています。当院では、まずは研修医が診療科ごとにいくつの症例を経験してきたかという数字をきちんと記録することが必要になるはずだと考え、教育研修部がそのデータ管理を行うべく新しいシステムを開発しました。研修医それぞれが、各診療科の患者さんを現在何名受け持っているのか、1週間単位でデータを更新していきます。このシステムの稼働により、研修の5年間で必要な診療科の患者さんを必要な人数、満遍なく受け持つことが可能となり、新しい専門医制度下で専門医の資格取得の要件をクリアできるようになるでしょう。
新たな制度に向けて、どこよりも早く学びの環境を整備しようと取り組むのは、未来をしっかりと見据えて人を育てたいという私たちの思いの現れ。その思いに応えて学ぶ志のある方を待っています。