医療最前線 レビー小体型認知症
1.座敷わらし伝説の真実とは?
古くから居ないはずの知らない子どもを見たという言い伝えがあります。このような幻覚体験が、実は1980年代に日本人の小阪憲司博士によって発見されたレビー小体型認知症という病気の症状であった可能性があります。レビー小体とは脳内のドーパミン神経が減り、脳の運動系が働きづらくなる病気であるパーキンソン病で見られる神経の病変ですが、このレビー小体が運動系だけでなく脳の大脳皮質や自律神経系を冒すのがこの病気の特徴です。
2.症状と診断は?
大脳皮質の症状として、認知症が出ます。アルツハイマーでは傷害されない後頭葉(視覚中枢)が冒されるために、特徴的な幻覚が出現すると考えられています。小さい子どもや妖精とは限らず、人の顔や小動物や虫、幾何学模様だったりします。認知症の症状には波があり、良くなったり悪くなったりします。身体がこわばったり手の震えがあったり動きがぎこちなくなったりするパーキンソン症状も出現します。自律神経系の症状として起立性低血圧や失神や転倒が起こったりすることもあります。うつ状態が出ることも多く、脳に影響する薬の副作用が強く出るなど薬に対する過敏性が見られる場合もこの病気が疑われます。
当院で原因不明の不調や他の認知症として取り扱われていた方が、実はこの病気と診断されることは多いです。脳内のドーパミン神経減少をDAT-SCAN(ダットスキャン)というラジオアイソトープを用いた画像検査(午前10時に注射をして午後2時に撮影します)で診断することができます。
3.治療は?
幻覚や認知症、パーキンソン症状は、それぞれに効果のあるお薬を調整することによって安定させることができます。認知症に対してはアルツハイマー型認知症治療薬であるアリセプトが効果があります。治療によりまったく症状が進行しないだけでなく、症状が消失する方も多いので、専門医による適確な診断と治療が望ましい病気です。
幻覚は、言葉で否定するのではなく、本人に触らせてそこにないことを確認させると消えることが多いです。
4.寝言の多い人には?
睡眠中に暴れたり寝言がひどい人は、REM睡眠に異常があるREM睡眠行動障害があると考えられています。これらの症状を持つ方が高率にレビー小体型認知症を発症することが知られています。寝言が多く、もの忘れが気になる人、理由不明の転倒や失神が複数回ある方は診断を受けてもよいかもしれません。一般論として寝言の多い人はアルコールを控えることが重要でしょう。
出典:『三友新聞』(2016年6月2日発行、三友新聞社)