医療最前線 慢性腎臓病(CKD)

1.慢性腎臓病(CKD)とは?

腎臓の働き(腎機能)が健康な人の6割以下に低下しているか、または蛋白尿が出るなどの腎臓の障害を示す所見が続く状態を慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)といいます。従って、CKDには、すでに腎機能が低下している方だけでなく、これから腎機能が低下する可能性が高い方も含まれることになります。CKDの方は、将来透析が必要になるリスクが高いことに加え、心血管疾患にかかる可能性が高いことが問題です。日本では、人口の1/8程度がCKDに該当すると推算されています。

2.慢性腎臓病(CKD)になる原因は?

慢性糸球体腎炎などの腎臓病も重要な原因ですが、高血圧、糖尿病に伴って腎機能が低下するケースが非常に多くみられます。近年、あらたに透析が必要となる方の4割以上は糖尿病を原因とするものです。肥満、禁煙などの生活習慣やメタボリックシンドロームもCKDの発症に大きく影響していると考えられています。また、腎機能は加齢とともに低下するため、年齢が上昇するとともにCKDの方の割合も増加します。

CKDは、初期にはほとんど症状がありません。健康診断などで、CKDの原因となりうる病気や異常所見を早期に発見することが重要です。特に、蛋白尿の程度が大きい場合や血尿と蛋白尿が同時に陽性の場合は、将来透析が必要な程度まで腎機能が低下するリスクが高くなります。これらの高リスクの方は特に、生活習慣の改善に加え、高血圧や糖尿病などをしっかり治療することが大切です。

3.治療法は?

CKD治療の目的は、腎機能をできるだけ保持し、透析が必要な末期腎不全への進行を遅らせ、心血管疾患を予防することです。個々の腎臓病に応じた治療もありますが、CKDすべてに共通した治療があります。

食事療法は、食塩とタンパク質の制限が中心となります。腎機能低下が目立ってくると、カリウム制限も必要となってきます。積極的な食事療法をこころみる場合は、栄養の不足や偏りが出ない様に、管理栄養士と連携しながらおこなうことが望まれます。

薬剤を用いた治療では、血圧を下げることと蛋白尿を減らすことが中心となります。さらに、病状に応じて、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪)、貧血、高尿酸血症などの治療もおこないます。また、痛み止めの使い過ぎや不健康な生活習慣(肥満、喫煙、運動不足、過労など)など、CKDを悪くする要素を可能な限り避けることが大切です。また、大きな病気をすると、腎機能がさらに低下することがあります。CKD以外の合併症をお持ちの方は、その病気を悪くしないように気をつけましょう。

出典:『三友新聞』(2016年7月7日発行、三友新聞社)

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三瀬 直文 (副院長・腎臓内科 部長・血液浄化部 部長)

三瀬 直文副院長・腎臓内科 部長・血液浄化部 部長

1991年
東京大学医学部 卒業
1998年
東京大学大学院 医学系研究科 修了
1998年
イタリア マリオ・ネグリ研究所 留学
2001年
三井記念病院 腎臓内科
2010年
腎臓内科 部長
2021年
三井記念病院 副院長(兼任)
学会認定
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本腎臓学会認定腎臓専門医・指導医
日本透析医学会認定透析専門医・指導医
日本医師会認定産業医
専門分野
高血圧・腎疾患の診断・治療
急性および慢性腎不全
透析療法、腎不全に合併する心疾患の診断・治療
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