医療最前線 悪性リンパ腫

1. 悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫は、中高年に比較的多い悪性腫瘍です。成熟途中のリンパ球ががん化したものです。大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、約10%がホジキンリンパ腫であり残りは非ホジキンリンパ腫です。それぞれのリンパ腫はさらに細分化され数十種類に分類されています。その中で最も頻度が高いのは、び漫性大細胞型B細胞リンパ腫で全体の約3分の1を占めています。次に多いのは濾胞性リンパ腫であり、さらにマルトリンパ腫と続きます。

また、悪性リンパ腫は進行速度の観点から分類できます。数か月から年の単位で進行していく緩徐進行タイプがあり、前述した濾胞性リンパ腫やマルトリンパ腫がこれにあたります。一方、急速進行型では週から月の単位で進行します。前述した、び漫性大細胞型B細胞リンパ腫がこれに該当します。

2. 出現する症状

典型的にはリンパ節が腫れます。身体の表面では、首の周り、腋の下、鼠蹊部などがよく腫れます。また、リンパ節以外にも消化管や肺、脳、皮膚、骨などあらゆる臓器にリンパ腫は発生する可能性があります。症状としてはリンパ節の腫れのほかに気道や血管、消化管、尿管などの圧迫による症状、臓器浸潤による臓器の機能低下、その他B症状と呼ばれる発熱や大量の寝汗、体重減少などが挙げられます。

3. 診断方法

リンパ節が腫れる原因には、悪性リンパ腫以外にも、感染症や自己免疫疾患、その他の悪性腫瘍など様々あります。腫脹が続く場合は、生検といって腫れているリンパ節を切除し、病理検査にて診断をつけます。診断がつきましたら、次はステージングといって、身体のどこに悪性リンパ腫があるのか、局所的なのか全身に広がってしまっているかを検査します。これには全身のCT検査やPET検査、骨髄検査、消化管内市況検査などを行います。診断がつきステージングが決定したら、治療へと進みます。

4. 治療方法

悪性リンパ腫の種類、ステージングの結果、年齢、臓器傷害の有無などによって決定します。例えば、び漫性大細胞型B細胞リンパ腫の進行期(全身にリンパ腫がある場合)にはR-CHOP療法と呼ばれる抗体療法と抗がん剤からなる化学療法を施行します。緩徐進行性である濾胞性リンパ腫の場合は、経過観察する場合や放射線治療をする場合、R(リツキシマブ)単剤治療やR-化学療法など状態や患者さんの希望に合わせて様々な選択肢の中から治療を決定します。いずれにしましても、悪性リンパ腫の治療法は近年非常に進歩してきており、治癒を含めた生存期間の延長や生活の質(QOL)の改善がみられています。悪性リンパ腫と診断されましたらお医者さんとよく相談し治療法や治療期間を選択していくことが重要です。

出典:『三友新聞』「医療最前線」(2017年4月27日発行、三友新聞社)

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高橋 強志 (血液内科 部長)

高橋 強志血液内科 部長

1992年
東京大学医学部 卒業

1994年
東京大学 第3内科

1999年
東京大学医学系大学院 卒業

2000年
東京大学 輸血部 助手

2003年
アメリカ スタンフォード大学 留学

2007年
東京大学 血液腫瘍内科 講師

2010年
三井記念病院 血液内科 部長

 

学会認定

日本自己血輸血学会/日本輸血・細胞治療学会認定自己血輸血責任医師

日本血液学会認定血液専門医・指導医

日本がん治療認定医機構認定暫定教育医

日本がん治療認定医機構がん治療認定医

日本内科学会認定総合内科専門医

日本輸血・細胞治療学会認定医

日本医師会認定産業医

 

専門分野

血液内科学

免疫学

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