なぜ、呼吸器外科をめざすなら三井なのか
―その理由をご説明します!―
POINT 1 世界にとどろく「羽田の胸骨正中手術」を生み出した伝統
胸骨正中両側縦隔リンパ節郭清と称する術式をご存じの方も多いでしょう。肺がんにおいて対側へのリンパ節への転移が疑われる場合に、左右のリンパ節をすべて郭清する手術を言います。かつて、こうしたケースでは(実は現在でも多くの施設では)、外科的治療は適応ではなく、患者は内科に送られていました。そんな時代にあって胸骨正中切開での両側縦隔リンパ節郭清をあみだしたのが、三井記念病院(以下、三井)の羽田圓城先生です。
何をかくそう私は、この術式が始められ、5年生存率が改善されていると聞き、画期的な術式のこれから先の結果を見届けたいと大学医局に籍を置いたまま教授に頼み込んで三井に入職しました。その後、胸骨正中両側縦隔リンパ節郭清は、肺がんの再発や転移の可能性を減じ、予後の改善を図るすばらしい術式であることが証明されます。結局、私は大学に戻ることなく三井の呼吸器外科の雰囲気が気に入ったこともあり現在に至ります。患者の長期予後を確認し、患者の命に貢献できる手術であることを見届けられました。
羽田先生オリジナルのこの術式は、日本のみならず欧米の呼吸器外科医からも興味を持たれ、「Hata‘s method」とも呼ばれています。こうした伝統がある科だからでしょう、所属する医師たちは皆、誇りを持って診療にあたり、教育にもきわめて熱心です。
POINT 2 「患者に寄り添う」信条のもと強い結束力で結ばれる
前述の羽田先生は、新たな術式の開発に情熱を傾ける一方で、お寺の息子さんだったからかもしれませんが、診断から治療、再発して、その治療、場合によっては墓場(最期)まで――「最期まで患者に寄り添う」を科の信条とし、医局を運営していました。そうした羽田先生を慕ってくる若い医師たちもたくさんおり、今では、そのころ三井の呼吸器外科にいた卒業生が、全国に散らばり教授や部長クラスのポジションに就いて活躍しています。昨年2016年には、現在三井にいる私たちも含めて呼吸器関係の卒業生が集まり「三気会」が結成されました。
羽田先生は、拡大手術の術式だけではなく、科における結束力も残してくれたと思います。当科の医師たちは卒業生もあわせて強い結束力で結ばれていますので、スキルアップで行き詰ったときや、進路を決める際に迷ったときにも、たくさんの先輩に相談できる環境にあります。
POINT 3 後期研修医にもやる気さえあれば肺がんの手術も任せる
当院の後期研修では、呼吸器外科を3ヵ月間研修します。呼吸器外科の魅力を知ってもらうため、すでに興味を持っている方には当院の呼吸器外科の専門フェローになってもらうため、濃密な研修内容を用意しました。
私は、医師になって何年目であるかよりも、本人のやる気を重視し、また、我々には、「研修医をしっかり育てる義務があり、研修医は育てられる権利を持っている」と考えています。そこで、本人が望むならば、もちろん完璧なバックアップ体制を整え、胸腔鏡下の気胸や肺がん、正中切開での縦隔腫瘍手術までを経験してもらっています。
肺は心臓の隣にあるので、手術の際には、心臓血管外科の素養、心臓との関係の理解が必要ですが、当院では心臓血管外科をまわってから呼吸器外科をまわるシステムなのでその心配には及びません。
後期研修後、当科に興味を持ってくださった方には、専門フェローのポストが用意されており、2~3年間で専門医の資格取得ができるほどの症例が蓄積できます。
呼吸器外科に少しでも興味のある方、当院の後期研修を選んでいただければ決して後悔させません。また、後期研修を終えて呼吸器外科を専門に決めた方には、先ほども申し上げた専門フェローの道があります。
「呼吸器外科をめざすなら三井!」。その理由をわかっていただければうれしい限りです。