―三井記念病院から世界へ―
海外での活躍の場を拓く「心臓血管外科」

宇内真也氏は、初期研修から7年間、三井記念病院(以下、三井)に在籍した後、トーマスジェファーソン大学病院で心臓血管外科のフェローとなり、現在は、クリーブランド・クリニックのスタッフドクターのポストにある。三井からアメリカに渡ってわずか5年でのことだ。

全国から集まった優秀な同期と部活の合宿のような研修だった

―宇内氏は、東京大学卒業後、初期・後期研修を三井で行うことを決断する。決め手となったのは?

宇内:研修必修化が始まって2年目に卒業を迎えようとしていた僕は、サッカー部とアイスホッケー部の活動で忙しく、研修先を探すための病院見学の時間をなかなかとれずにいました。「これではいけない」と奮起し夏休みを使って都内の名だたる研修病院をかたっぱしから見学し、そして「ここだ!」と思ったのが三井です。

有名研修病院は症例数が多く経験できるのが魅力のひとつですが、見学に行ってみると忙しすぎて忙殺されていると感じる施設も少なからずありました。しかし、三井は忙しくても若い先生方が育てられているのを実感しているのか、生き生きして楽しそうでさえありました。心臓血管外科志望だったので、5年間で一人前の外科医になれるプログラムにも惹かれました。

―どんな研修生活だったのだろうか。

宇内:予想どおり厳しかったけれど楽しい日々でした。いわゆる屋根瓦方式と呼ばれる教育体制ができ上がっていて先輩にしっかり教えていただけました。全国から集まってきた優秀な同期たちと夜に勉強会や糸結びの練習をしたり、緊急手術があれば見学したりと、まるで部活の合宿のようでした。ともに研修生活を送った彼らは一生の友人です。

知らず知らずの間に世界に通用する医師に育っていた

―後期研修中に髙本眞一氏が院長になる。「すごいことになった」と思ったそうだ。

宇内:世界でも名をとどろかせている心臓血管外科の権威の髙本先生が院長で赴任するのです。同科をめざしていた僕としては、ただただ驚くばかり。もちろん、ワクワクもしました。

―後期研修後は、迷わず髙本氏に「心臓血管外科のチーフレジデントとして残らせてください」と願い出たという。

宇内:当然の選択でしょう。三井の心臓血管外科はそれまでも秀でていましたが、髙本先生が加わって世界レベルにまで達したと思いました。実は、海外で仕事をしてみたいとの夢があり、学生時代からUSMLEの勉強を始め、研修医になってからも勤務の合間に勉強し、合格をしていました。アメリカで引け目を感じず臨床を行うためにも、引きつづき三井で実力をつけるべきだと考えたのです。

―髙本氏からの教えを糧に、アメリカ行きを実現。

宇内:髙本先生が来られてから自己弁温存基部置換や、胸腹部大動脈瘤などの複雑な大動脈手術をより積極的に行うようになりました。しかし、外科医もですが、麻酔科医、看護師、人工心肺の技師なども、そういった手術に慣れていませんでした。そこで髙本先生は、手術の前日に関係者全員を集め、どういった手順で、何をどうするかを、ひとつひとつ詳細に説明し、共通認識を持てるまで術前カンファレンスを行いました。オペ室で切ったり縫ったりするよりも、術前のプランニングがいかに大事かを知ることができたのは、僕にとって大きな収穫でした。今、複雑で難しい手術を任せられるようになり、そのときの体験が非常に役立っています。

髙本先生とは一緒に多くの厳しい手術を経験させていただきました。そんな中、少しずつ自信を持てるようになり、海外行きを現実にすべく「若手心臓外科医の会」のサイトにあったトーマスジェファーソン大学病院(ペンシルベニア州)のフェロー募集の記事を見てアプライし、2週間後にはアメリカで面接が行われ、間もなく採用の通知を手にしました。自分の選択してきた歩みは間違いでなかったと確信できた瞬間です。知らず知らずの間に世界に通用する医師に育てていただいていたのですね。

アメリカの病院に興味を持つ方 ご連絡をお待ちします

―最初は3年間で戻るつもりが、推薦してくれる方がいてクリーブランド・クリニック(オハイオ州)のクリニカルアソシエイトに。そして、めきめきと頭角を現し、2年後の現在、スタッフドクターのポストにある。さらっと書いてしまったが、読者諸氏の多くはゾクッとしたのではないだろうか。なんといっても、「あの」クリーブランド・クリニック。US News & World Reportが毎年アメリカ全土の5,000病院の中から 疾病ごとにベストホスピタルを選ぶが、1994年以降、心臓内科・外科部門で22年連続1位に選ばれ、年間4,000例以上の心臓手術を行う、一流の心臓外科医が世界から集まる病院だ。

宇内:とにかく任せられる手術の難易度がどんどん上がっていきました。現在は、大動脈手術、感染性心内膜炎や再手術症例、心臓移植・肺移植を担当しています。日々、勉強です。行き詰ってどうしようもなくなったときなどに髙本先生に連絡すると、「なんでも自分が疑問に思ったら深く調べろ。徹底的にリサーチし、論文にしなさい」とはっぱをかけてくださいます。

―今後については、未定だが「日本の心臓血管外科の役に立ちたい」と語る。

宇内:日本の若い心臓外科医の方々の中で、アメリカの病院を見学してみたい、留学をしたいと考える人がいれば、ぜひ、ご相談ください。世界中から人が集まってくる医療機関を見学するのも、そこで働くのも大いに刺激になると思います。来年5月には三井の若い医師が見学に来る予定です。

―三井に7年間在籍後、渡米してわずか5年でクリーブランド・クリニックのスタッフドクターになった宇内氏は、同院の心臓血管外科が世界レベルで、世界で活躍するための道を拓いてくれる場であるとの証左と言えるのではないだろうか。

宇内 真也 (クリーブランド・クリニック スタッフドクター)

宇内 真也クリーブランド・クリニック スタッフドクター

2005年
東京大学医学部 卒業
2005〜2009年
三井記念病院 初期・後期外科研修
2009〜2012年
三井記念病院 心臓外科 チーフレジデント
2012〜2015年
トーマス・ジェファーソン大学 心臓外科 フェロー
2015〜2017年
クリーブランドクリニック クリニカルアソシエイト
2017年〜
クリーブランドクリニック スタッフ
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