医療最前線 片側顔面痙攣

1.片側顔面痙攣とは?

顔の片側が自分の意志とは無関係にぴくぴく動いてしまう病気です。似た病気に眼瞼痙攣がありますが、これは両側の眼の周囲のみに起こります。

2.どのような症状が起こる?

眼の下からはじまり、眼の周囲に広がり、頬、口まで引きつるように進行していきます。進行具合や速度には個人差がありますが、年単位で悪化していくことが多いです。症状が進行した場合、見た目の問題になりますので、自然に外出や人と会うことを控えてしまうこともあります。

3.原因は?

ほとんどの場合、脳の深部(脳幹部)から顔面神経が出る部分で血管が神経を圧迫し、顔面神経が過敏になってしまうことで起こります。同じような原因で起こる病気に三叉神経痛・舌咽神経痛があり、いずれも血管が神経を圧迫することが原因で起こるため、「片側顔面痙攣・三叉神経痛・舌咽神経痛」は「神経血管圧迫症候群」とも呼ばれます。

4.診断法は?

問診と視診が最も重要です。症状にある程度のバリエーションはありますが、専門の医師が見ればまずわかります。原因を明確に把握するためにはMRIが必須ですので両方あわせて診断することが多いです。

5.治療法は?

治療方法は3つあります。薬物治療、ボツリヌス毒素注射、手術治療です。薬物治療が非常に有効であるという証拠はなく、私は原則として薬の処方は行っていません。ボツリヌス毒素注射は顔面の痙攣している部位にボツリヌス毒素を注射するもので、筋肉の緊張をやわらげる効果により、片側顔面痙攣の症状が緩和されます。この治療の場合、効果が3~4カ月で切れるため、効果を持続させる場合には注射を繰り返し行います。最後の手術治療ですがこれが唯一の根本的な治療方法です。耳の後ろを切開し、頭蓋骨に500円玉程度の大きさの穴をあけ、頭蓋骨と脳の間から顔面神経に到達し、神経を圧迫している血管を離して固定する手術です。一週間から10日間程度の入院期間が必要になります。脳の深部の操作が必要となるため、熟練した脳神経外科医が行うべき手術です。脳神経外科の手術全体の中では数が多い手術ではありませんが、当院では伝統的にこの手術を非常に多く行っています。

6.どの治療方法がおすすめ?

治療の選択は患者さんにしていただきます。リスクが低い順番に治療を導入するのであればまずはボツリヌス毒素の注射を受けていただくのが良いと思います。それでも満足のいく結果が得られない場合や、根本的に治したいという希望があれば手術治療を選択すれば良いと思います。それぞれの治療のメリット、デメリットを医師と十分に相談して決めるのが重要です。

出典:『三友新聞』(2017年7月6日発行、三友新聞社)

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尼崎 賢一 (脳神経外科 科長)

尼崎 賢一脳神経外科 科長

1993年
群馬大学医学部 卒業
山梨医科大学(現 山梨大学)病院 脳神経外科
2002年
医学博士
2004年
スウェーデン ウプサラ大学 留学
2007年
三井記念病院 脳神経外科
2011年
脳神経外科 科長
学会認定
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医
専門分野
三叉神経痛
顔面痙攣
舌咽神経痛
脳腫瘍
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