医療最前線 原発性アルドステロン症

1.原発性アルドステロン症とは?

高血圧は日本では約10人に1人がなると言われています。そのうちの10%以上が二次性高血圧と言われています。二次性高血圧の原因としては睡眠時無呼吸症候群や副腎でのホルモン産生過剰、腎血管の異常、甲状腺疾患など様々なものがありますが、最も頻度の多いものとして原発性アルドステロン症があります。

2.どのような症状が起きるか?

高血圧になりますが、本態性高血圧と比べて降圧薬が効きにくい、血液中のカリウムの濃度が低くなりやすいなどの特徴があります。また若い人の高血圧発症の原因にもなります。本態性高血圧に比べた場合、同様に血圧コントロールをしていても、心肥大、脳・心血管系障害が起きやすいことがわかっています。

3.原因は?

アルドステロンというホルモンは副腎という腎臓の上にある臓器で作られます。塩分を保持するためのホルモンで、通常は体の水分量や血液中のカリウムの量に応じて分泌調節されています。しかし、副腎に腺腫というできものが出来たり、内蔵脂肪過多で内臓脂肪からアルドステロン分泌刺激作用のある物質が出たりすることで、過剰にアルドステロン分泌が生じてしまうとされています。

腺腫の場合、大多数は体細胞変異という副腎組織での遺伝子変異により生じることがわかってきています。遺伝性は稀ながらあり、その場合には20歳代での高血圧など特に若年での高血圧を発症します。

4.診断法は?

アルドステロンというホルモンは、普通の人でも脱水や塩分摂取不足などで上昇しますので、1回の検査では判断がしにくく、安静にしてもらい外来で複数回採血し、アルドステロンとそれを刺激するホルモンのレニンを測定します。異常があれば、さらに生理食塩水や利尿剤、降圧剤といった負荷を行ってホルモンの変化を調べます。原発性アルドステロン症と診断され、手術を希望される場合には左右どちらの副腎からホルモンが出ているか、カテーテル検査を行って判断します。

5.治療法は?

治療法としてはアルドステロンの作用をブロックする内服薬か、副腎の腺腫を手術で取り除くかの2種類があります。手術が対象となる人は、一般的には副腎の片方に腺腫がある場合に限られます。両方から分泌過剰がある場合や手術を希望されない場合には、内服薬治療となります。今の段階で手術と内服治療のどちらが優れているかの結論は出ていません。5~10年の観察研究では心肥大抑制効果などは手術でも内服でも変わらないとされていますが、それ以上の長期の影響はまだわかっていません。若年の方では費用対効果として手術が優れていると考えられ、また内服で十分調整のつかない重症な場合には手術をより強く勧めます。

出典:『三友新聞』(2017年9月7日発行、三友新聞社)

関連リンク

森 典子 (内分泌内科 部長)

森 典子内分泌内科 部長

1997年
東京大学医学部医学科 卒業
東京大学医学部附属病院 研修
1999年
東京大学医学系研究科 機能生物学神経生理 博士課程
2003年
茨城県立中央病院
2004年
公立昭和病院 内科 シニアレジデント
2005年
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 医員
2009年
東京大学22世紀医療センター 特任助教
2012年
東京女子大医科大学病院 高血圧内分泌内科 助教
2015年
東京大学22世紀医療センター 特任助教
2017年
三井記念病院 内分泌内科 科長
2020年
   内分泌内科 部長
学会認定
日本内分泌学会認定専門医・指導医
日本高血圧学会認定専門医・指導医
日本甲状腺学会認定専門医
専門分野
副腎
甲状腺
その他内分泌全般
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