医療最前線 腰椎椎間板ヘルニア

1.腰椎椎間板ヘルニアとは?

各腰椎を連結する椎間板が脊柱管内に飛び出して神経を圧迫し、腰痛や下肢痛を呈する状態を言います。左右どちらかの臀部から大腿後面にかけて痛みが走る状態は、よく「坐骨神経痛」と呼ばれますが、あくまで痛い場所を示す言葉に過ぎず、実際には腰椎椎間板ヘルニアが原因疾患のほとんどです。

2.どのような症状がでるか?

ウェストの高さにある第五腰椎部でのヘルニアが頻度は高く、坐骨神経痛と腰痛が主症状です。ふくらはぎのしびれの他、時に下肢の筋力低下を伴います。腰痛のために医者に診てもらうと、すぐに腰椎椎間板ヘルニアと言われてしまうことがありますが、それは間違いです。下肢症状を伴っていなければ、椎間板ヘルニアとは即断できません。

3.検査方法は?

症状が強い場合や長引く場合にはMRIという画像検査が必要です。最終診断はMRIによる画像確認が必要となります。ヘルニアと同様の症状を呈する疾患は他にもあり、癌の腰椎転移のような腫瘍性疾患が見つかることもあります。骨のレントゲン写真だけでは、椎間板ヘルニアとは断言できないのです。

4.治療法は?

各種鎮痛剤を使用します。以前よりも強力な鎮痛剤が開発されてきています。高齢者むけの内臓に優しい鎮痛剤もあります。痛みが強い場合、早急にMRIによる画像診断を行い、大きさや部位の評価のほか、自然治癒が見込めるタイプのヘルニアかどうかの見極めを行います。激痛のために夜も眠れない場合には、入院の上で点滴による鎮痛を行ったり、レントゲン透視下に患部を狙い撃ちにする神経根ブロックという注射療法を行ったりします。筋力低下が強い場合や、薬物とブロックによる治療効果が乏しい場合には、早期の手術をお薦めすることもあります。2~3週までに軽快傾向がみられる場合には、そのまま保存的治療で粘りますが、激痛のヤマを超えられない場合には、やはり手術のご相談をします。約2センチメートルの傷で内視鏡的にヘルニアの切除を行います。入院期間は1週間程度です。大きなヘルニアではもう少し傷を大きくして顕微鏡視下の手術を行います。

5.当院での治療の特徴は?

手術を回避できそうかどうか、十分に保存療法を行います。手術が必要な場合には早期の手術を組むこともできます。即入院対応でき、手術が必要な場合にも待機期間は短いです。卓越した止血技術を裏打ちとする高精度の手術を提供しています。

出典:『三友新聞』(2018年5月24日発行、三友新聞社)

関連リンク

星地 亜都司 (副院長・整形外科 部長・教育研修部 部長)

星地 亜都司副院長・整形外科 部長・教育研修部 部長

1984年
東京大学医学部 卒業
1984年
東京大学医学部 整形外科 入局
関連病院勤務(三井記念病院を含む)
1997年
国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 整形外科 医長
1999年
東京大学 講師(医学部附属病院 整形外科)
2008年
自治医科大学 整形外科 准教授
2014年
三井記念病院 整形外科 部長
2015年
教育研修部 部長(兼任)
2016年
副院長(兼任)
学会認定
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本整形外科学会認定整形外科専門医
専門分野
脊椎外科
コンピュータ支援手術
運動器疾患全般
著書
『Critical Thinking 脊椎外科』(三輪書店)
『整形外科手術クルズス』(編著 南江堂)
  • 三井記念病院TOPページヘ
  • 求人一覧
  • お問い合わせ

ページの先頭へ