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医療最前線 クローン病

1.クローン病とは?

クローン病は若年者に多く発症する消化管に炎症をきたす疾患で、前回お話しした潰瘍性大腸炎同様、免疫機構の異常により発症します。

潰瘍性大腸炎との違いは(1)小腸、大腸そして肛門が病変をきたす好発部位であるが、全消化管に病変を形成しうること、(2)炎症による潰瘍が消化管の深い部分までに及び、腸に穴があいたり(穿孔)腸と腸がトンネルを形成したり(瘻孔)腸が細くなったり(狭窄)するような腸管の変形をきたしうることが挙げられます。

2.どんな症状が出るか?

病変部位や重症度によって症状はさまざまです。もっとも多いのが腹痛、下痢ですが、発熱や体重減少を伴うことも多いです。肛門に病変を形成する場合、いわゆる痔瘻(肛門周囲に膿がたまり、それが肛門周囲の皮膚側に破れて間欠的、または持続的に排膿される状態)を形成し肛門部の疼痛や違和感を伴います。腸管の狭窄を生じた場合には腸閉塞症状(排便、排ガスがなくなり腹部が膨満し嘔吐する)をきたすこともあります。症状が一定しないことから、しばしば発症から確定診断までに時間がかかり、腸閉塞による手術や肛門症状精査のための大腸の検査をうけて、初めて診断がつくような場合もあります。

3.どのような人が発症しやすいのか?

好発年齢は10代後半で、小児期に発症する方も多くいらっしゃいます。日本には約5万人の患者さんがいると推計されており、男性が女性の約2倍の発症率です。潰瘍性大腸炎同様親から子へ伝わるような遺伝性疾患ではありませんが、血縁にこの疾患がいらっしゃる方はそうでない方に比べて発症頻度が高いことが知られています。

4.治療法は?

以前は治療薬の少ない難病でしたが、抗TNFα抗体という特効薬が開発されてからは多くの患者さんで病勢をコントロールすることができるようになりました。TNFαとはサイトカインとよばれる体内で炎症を惹起する一連の物質の一つですが、抗TNFα抗体はこれを中和する薬剤です。多くの患者さんで有効な薬剤ですが注射薬であり、定期的に注射を継続しなければなりません。その他、潰瘍性大腸炎でも使用されるステロイド、免疫調節薬も重要な治療薬です。クローン病の病勢には食事内容も深くかかわっていることが分かっており、食事や栄養剤による栄養療法も行われます。腸閉塞症状を生じたり、瘻孔を形成したり、肛門症状が強い場合は手術が行われます。最近ではTNFα以外のサイトカインをターゲットとした薬剤も使えるようになり、治療の幅は徐々に広がっています。薬物治療、栄養療法、手術などを患者さんの病態に合わせて適切に選択して、長い罹病期間をできるだけ普通に生活できるようコントロールしていきます。

出典:『三友新聞』(2018年8月23日発行、三友新聞社)

関連リンク

加藤 順 (内視鏡部 部長)

加藤 順内視鏡部 部長

1993年
東京大学医学部 卒業
東京大学医学部附属病院 内科
1994年
社会保険中央総合病院 内科(現:東京山手メディカルセンター)
1995年
亀田総合病院 消化器内科
1997年
東京大学 消化器内科
2001年
日本赤十字社医療センター 消化器内科
2003年
岡山大学 消化器・肝臓内科
2010年
和歌山県立医科大学 第二内科 准教授
2018年
三井記念病院 消化器内科 内視鏡診療部長
内視鏡部 部長
学会認定
日本消化器病学会認定消化器病専門医
日本消化器病学会認定施設における指導医
日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医・指導医
日本内科学会認定総合内科専門医
専門分野
炎症性腸疾患
大腸内視鏡
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