わたしの専門

医療最前線 てんかん

1.てんかんとは?

脳の神経細胞は、周囲の神経細胞とネットワークを形成し、電気的な信号で神経伝達のやりとりを行っています。しかし、突然、過剰に興奮する異常な神経細胞ができてしまうと、過剰な電気信号がネットワーク上に拡散し、けいれんに代表されるような、てんかん発作を起こします。てんかんは脳の慢性的な病気であり、同じ発作が繰り返しみられます。100人に1人程度と高い有病率の疾患ですが、最近では高齢化社会に伴い、更に有病率は増えています。

2.症状は?

異常な神経細胞が脳のどこに存在するかによって異なります。手足をつっぱる(強直性けいれん)、手足をがくがくさせる(間代性けいれん)、急に動作を止めてボーっとする(意識減損発作)、口をもぐもぐする(自動症)、体をピクッとする(ミオクロニー発作)などの多彩な症状があります。意識を失う発作が多いですが、意識が保たれる発作もあります。脳全体に過剰な電気信号が拡散すると、全身性けいれんとなります。

3.原因は?

小児の場合は、脳の奇形などが多いです。高齢者の場合は、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害が多いです。また最近は、認知症によるてんかんが増加しています。その他、脳挫傷、脳炎、脳腫瘍など、様々な脳の病気で二次的に発症します。そのためてんかんは、どの年齢でも発症します。一方で、原因を特定できないことも多くあります。これは頭部MRIでは神経細胞レベルの異常を検出できないためです。その場合でも、脳の電気信号を検出する脳波が診断に有用となり得ます。

4.治療は?

抗てんかん薬を内服します。以前の抗てんかん薬は、副作用が多く、他の薬剤との相互作用が多く、用量調節が難しいなど、使いにくい薬剤ばかりでした。ところが最近、副作用が少なく、相互作用が少なく、用量調節が容易、かつ強力という、優れた有効性と安全性を兼ね備える、新しい抗てんかん薬が多く登場しました。これにより、てんかんの再発なく生活できる患者さんが、非常に多くなってきました。これまで内服で再発なく生活できる割合は70%程度とされていましたが、その割合は更に増えていると想定されています。

5.偏見、差別

てんかんに対しては「子供の病気」、「怖い、恐ろしい病気」、「治らない」、「妊娠できない」、「精神病」、「障害者」などの誤解があり、社会生活、結婚、就職などにおいて、未だに偏見、差別が存在しています。てんかんは脳の病気で、科学的に解明がすすんでいる疾患です。治療も日々進歩しています。てんかんを持ちながらも、日常生活になんら支障なく生活されている多くの患者さんが、当院に通院されています。社会全体にてんかんの理解が深まり、てんかんに対する社会的な偏見、差別がなくなることを切に願います。

出典:『三友新聞』(2018年11月22日発行、三友新聞社)

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松本 英之 (脳神経内科 部長)

松本 英之脳神経内科 部長

2001
筑波大学医学専門学群 卒業
NTT東日本関東病院 内科研修医

2003
東京大学医学部附属病院 神経内科

2004
国立国際医療センター 神経内科

2005
横浜労災病院 神経内科

2006
東京大学大学院 博士課程 医学研究科 脳神経医学専攻 入学

2010
東京大学大学院 博士課程 医学研究科 脳神経医学専攻 卒業

2010
日本赤十字社医療センター 神経内科

2016
日本赤十字社医療センター 神経内科 副部長

2018
三井記念病院 神経内科 科長

2019
脳神経内科 部長

学会認定等
日本内科学会 総合内科専門医・指導医
日本神経学会 神経内科専門医・指導医
日本神経学会 臨床神経生理(中枢)セクション コアメンバー
日本脳卒中学会 脳卒中専門医
日本臨床神経生理学会 代議員
日本臨床神経生理学会 脳刺激法に関する小委員会 委員・事務局
日本臨床神経生理学会 運動誘発電位ガイドライン作成委員会 副委員長
日本運動障害研究会 幹事
運動障害 編集委員
杏林大学 臨床教育講師
共立女子大学・短期大学 非常勤講師
Editorial Board of Clinical Neurophysiology
Special interest group on non-invasive brain stimulation, International Federation of Clinical Neurophysiology(IFCN)

専門分野
てんかん
パーキンソン病
脳卒中
筋電図
磁気刺激
脳神経内科疾患全般

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