医療最前線 鼠経ヘルニア

1.鼠径ヘルニアとは?

下腹部、足の付け根付近を鼠径(そけい)部と呼び、この部分の壁の弱い所から、腹部に納まっているべき腸などが飛び出し、鼠径部が膨らむ病気が「鼠径ヘルニア」で、いわゆる「脱腸」のことです。

鼠径ヘルニアは、あらゆる年齢層にみられる病気です。小児の場合、原因は先天的なものですが、成人では組織の脆弱化や腹圧の上昇などが関係すると言われます。

2.どのような症状か?

立った時、おなかに力を入れた時などに、おさまりきらない腸などが飛び出して鼠径部が膨らみ、時に鼠径部の痛みや腹痛を伴います。多くの場合は横になったり手で押さえることで戻り、痛みもおさまります。

飛び出した腸が出口で締め付けられて戻らなくなる(「嵌頓=かんとん」といいます)と、通りが悪くなって腸閉塞になり、強い腹痛・腹部の張り・嘔吐などが起こります。更に強く締め付けられ、腸に血が通わなくなる(「絞扼=こうやく」といいます)と腸が壊死して穴があき、腹膜炎や敗血症などの重篤な状態に陥り命に危険が及ぶ事があります。

「嵌頓」や「絞扼」の起こり易さは膨らみの大小では判断が難しく、大きく飛び出しても戻り易く症状に乏しいことがある一方、小さな膨らみでも痛みが強く、戻しにくく腸閉塞になってしまうことがあります。

3.治療法は?

幼児の場合、成長に伴い弱い部分が小さくなり、自然に鼠径ヘルニアがなおってしまう事がありますが、成人では手術以外に根治する方法はありません。

以前は自己組織を使った補強が行われ、縫い合わせた組織に強い緊張がかかるため、術後に長期の安静を要し、再発率もやや高めでした。現在は合成繊維で作ったメッシュを使い、緊張をかけずに修復する方法が標準になっています。

手術には、鼠径部を直接切開して弱い部分に到達する前方到達法と、腹腔鏡を使って内側から修復する方法があり、一長一短がありますが、当院では前方到達法を標準としております。

4.予防法は?

鼠径ヘルニアは、長時間の立ち仕事や重量物の運搬など、腹圧が高くなる仕事に従事する方に起こり易いともいわれますが、そうでない方にも同様に発症するため、一般的な予防法はありません。

一方、軽い症状から徐々に悪化していくとは限らず、突然嵌頓や絞扼を起こす事があるので、鼠径ヘルニアではないか、と思った時は、速やかに受診して診断をお受けになる事をお勧めします。

(出典:『三友新聞』(2019年4月4日発行、三友新聞社)

平田 泰 (消化器外科 科長)

平田 泰消化器外科 科長

1982年
東京大学医学部卒
東京大学第二外科研修医
1983年
横浜船員保険病院外科
1984年
東京都立墨東病院外科
1986年
東京大学医学部第二外科
1987年
埼玉県立がんセンター 腹部外科
1989年
東京大学医学部附属病院 第二外科
1992年
三井記念病院 消化器外科 医員
1997年
三井記念病院 消化器外科 科長
資格
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
専門分野
腹腔鏡手術
上部消化管内視鏡診断
一般消化器外科手術
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