医療最前線 乳房再建について

1.形成外科について

形成外科は、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、みなさまの生活の質〝Quality of Life〟の向上に貢献する、外科系の専門領域です。令和時代の幕開けとなる本年より、三井記念病院に開設されました。

2.乳がんと乳房再建

乳がんは本邦で次第に罹患率が上昇しており、最新のデータでは日本の女性の11人に1人が一生のうちに乳がんにかかるとされています。乳がんの根治的な治療は、様々な治療法が開発されてきた今日においても、手術で取り除くことです。本邦では乳がんの治療の結果として、命と引き換えに、女性の象徴でもある乳房を失うことは当然のこととされてきました。しかし、平成の後半に入ると、ひとつひとつ乳房再建術が保険治療の適用となり、社会に受け入れられ、地域によっては当たり前となってまいりました。乳房再建は手術の時期により、乳がんの手術と同時におこなう一次再建と、乳がんの手術を終えたうえで別のタイミングでおこなう二次再建に分けることができます。方法は次の二種に大別されます。

3.人工物による再建

シリコーン・ブレスト・インプラントを使って乳房を再建します。2013年より健康保険が適用となりました。手術時間や入院期間が短く、からだのほかの部位に傷をつける必要もないなど、負担が少ない点が最大のメリットです。一方で自分の体ではない「異物」であり、ひとたび細菌感染をおこすと(数%の頻度)交換や取り出す手術が必要となります。また、長期に見ると硬くなったり(被膜拘縮)、壊れたりすることも事実です。

4.自家組織による再建

自分のからだのほかの部位から組織を移植して、乳房を再建する方法です。2008年より正式に保険適用されました。手術時間や入院期間は人工物と比べて長くなります。しかし、劣化したり、破損したりすることがありません。負担は大きい分、「一生もの」の再建ということができます。移植する際に血管を一度切り離して顕微鏡下につなぐ手技が必要になる術式が多いのも特徴です。この血管が詰まり、移植した組織が生着しない可能性が数%あります。当院では、下腹部、太もも、腰、背中の組織を移植する方法を選択しております。

以上、乳房再建について時期や術式の違いにより説明してまいりました。ライフスタイル、ライフステージによって、乳房再建の目的と、かけられる時間は様々です。患者さんひとりひとりの「今」に最も適した再建方法を選択するお手伝いをし、提供することを目指しています。

(出典:『三友新聞』2019年5月16日発行、三友新聞社)

棚倉 健太 (形成外科・再建外科 科長)

棚倉 健太形成外科・再建外科 科長

2005年
筑波大学医学専門学群 卒業
筑波大学附属病院初期臨床プログラム
2007年
筑波大学 形成外科
2008年
いわき市立総合磐城共立病院 形成外科
2009年
筑波大学 形成外科
2010年
台湾 長庚紀念医院 形成外科(留学)
2011年
がん研究会有明病院 形成外科
2014年
がん研究会有明病院 形成外科 副医長・医局長(兼任)
2019年
三井記念病院 形成外科 科長
学会活動・認定
日本専門医機構認定 形成外科専門医
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会認定 乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師
日本形成外科学会 ブレストインプラントガイドライン 管理委員
日本形成外科学会 小児形成外科分野 指導医
日本乳癌学会 評議員
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 評議員
専門分野
再建(乳房、腹壁・ヘルニアを含む体幹、四肢)
リンパ浮腫
マイクロサージャリー
創傷治癒
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