わたしの専門

医療最前線 目と口が渇く膠原病の話

1.ドライアイ、ドライマウス

健康な人では暑い時、運動後、疲れている時などに経験しますが、月単位で渇きが頻繁に気になる方は病的な可能性があります。原因で有名なのは糖尿病やストレスで、それ以外にも薬の影響、口呼吸などがあり、いずれも該当しなければ膠原病の一つであるシェーグレン症候群の可能性があります。膠原病とは、細菌などのよそ者に対する抵抗力に代表される免疫という体の働きの一部が過剰に活発化して自分の体を攻撃し、体の複数の臓器に影響が出る可能性がある病気の集まりです。

2.シェーグレン症候群とは?

体のあちこちに潤いをもたらす水分(涙、唾液など)を作り出すところがうまく働かない結果、目、口、皮膚、膣などが渇きます。血液の細胞である白血球、赤血球や血小板が減ったり、肺、腎臓、消化管、皮膚、神経、脊髄に病気が及ぶこともあります。我が国では10~30万人程度の方がこの病気にかかっていると推測され、決して珍しい病気ではありません。発症年齢の平均は40から50歳台ですが子供から高齢者まで幅広い年代に発症し、大半は女性で時に男性にも起こります。

3.どのような症状か?

口の渇きが強いとパンを食べたり話をするのがつらくなります。体のだるさ、関節や筋肉の痛み、耳下腺や顎下腺の腫れ、リンパ節の腫れ、発熱、体重減少、うつ状態を伴うことも頻繁に見られます。他に息切れ、むくみ、胸焼け、下痢、発疹、しびれ、三叉神経痛などが出ることがあります。注意すべき合併症として一般人口に比べてリンパ腫になる確率が5倍以上とされ、定期的な診察が必要です。

4.治療法は?

障害される臓器それぞれへの対応を行います。口の渇きには唾液分泌を促す薬、漢方薬や口腔ケア、眼の渇きには点眼薬など、だるさや内臓の病気は個々の状況に応じた薬を使います。これらにより多くの方は症状が軽くなり、生活や仕事での支障が改善されやすくなります。

5.日常生活で気をつけることは?

口の渇きがあると水分をこまめに摂っているかたが多いですが、量をとりすぎないよう注意が必要です。唾液の量が少ないために口の中は荒れた状態になっていることが多く、刺激のある食べ物や飲み物は避けたほうが良いです。虫歯や歯槽膿漏になりやすく、定期的な歯科受診をお勧めします。

当院の特徴としては、日本ではまだほとんど普及していない唾液腺エコーを用いて唾液腺の状態を把握し、他の検査結果と合わせて治療方法をご提案しています。総合病院のメリットを活かし、複数の診療科と連携を取りながら多角的な診断と治療、細やかなアドバイスを行い、患者さんが日常をより気持ちよく過ごしていただけるようにサポートを行っております。もし上記のような症状でお困りでしたら、当科にご相談下さい。

出典:『三友新聞』(2019年11月7日発行、三友新聞社)

大島 美穂膠原病リウマチ内科 科長

1999年
名古屋市立大学医学部 卒業
1999年
東京大学医学部附属病院 内科
2000年
東京厚生年金病院 内科
2001年
都立駒込病院 アレルギー膠原病科
2002年
国立相模原病院 リウマチ内科
2003年
虎の門病院分院 腎センター
2003年
東京大学医学部附属病院 アレルギーリウマチ内科
2008年
東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程 卒業、博士号取得
2015年
東京都保健医療公社多摩北部医療センター リウマチ膠原病科 医長
2019年
三井記念病院 膠原病リウマチ内科 医長
2022年
膠原病リウマチ内科 科長
学会認定
日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・評議員
日本内科学会認定総合内科専門医
日本骨粗鬆症学会認定医
日本内科学会認定産業医
専門分野
膠原病全般
シェーグレン症候群
関節リウマチ
骨粗鬆症
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