頸椎の手術とコンピュータ支援手術
関節リウマチとコンピュータ支援手術
コンピュータ支援手術は、後述するとおり(脊椎分離症の手術-こどもに多い分離症とその手術について)分離症やすべり症にも用いられますが、もっとも有効な疾患は「関節リウマチによる頸椎の脱臼」です。関節リウマチは、手足の関節が自己免疫によって破壊される病気です。主にひざやひじ・手首の関節などに症状が起こりますが、首にも脱臼などの症状があらわれます。首は腰と比べると骨が小さく、椎骨動脈という脳につながる重要な血管が通っているため、固定のためのスクリューの挿入が非常に難しく、腰椎以上に正確さが求められます。このような首の整形外科手術では、コンピュータ支援手術が非常に有用なのです。
ほかにも、側弯症と呼ばれる脊椎の形が正面から見たときに左右に曲がっている状態や、さらに椎体のねじれが伴う状態の場合にも有用です。側弯症の手術対象となるのは、主に女性の中学高校生で、美容的な意味合での治療となります。麻痺や痛みを伴うことの少ない本疾患においては、なおさらスクリューの誤挿入は禁物ですので、コンピュータ支援によるサポートを推奨します。コンピュータ支援手術はすべての整形外科手術で用いられるのではなく、脊椎にスクリューなどの金属片を挿入する際に用いられることが多くあります。
コンピュータ支援手術の費用
コンピュータ支援手術は、現在保険適用となっています。かつては保険適用でない高度先進医療でしたが、有効性が示され導入する施設も増えたことから、多くの患者さんの身近な手術となってきました。コンピュータ支援手術の技術料として加算されるのは、ベースとなる手術料に加え約2,000円程度ですので、医者と相談したうえで有用と判断された場合、コンピュータ支援手術は考慮すべき選択肢となるのではないでしょうか。
コンピュータ支援手術の展望
今後の普及が期待されるのは、手術中に撮影できるCTとコンピュータ支援手術との連動です。通常は手術の2〜3日後に再度CTを撮影し、スクリューが正しい位置に挿入されているかを確認します。しかし、手術中にCTで撮影することができれば、手術中にスクリューの位置の確認ができ、必要な場合にはその場で修正することが可能になるのです。患者さんの負担を考慮すると、このような連動は非常に有用ではないでしょうか。
また近年、整形外科領域では、内視鏡による低侵襲の手術も増えています。そこで内視鏡手術とコンピュータ支援手術の連動が期待されます。連動が可能となれば低侵襲の内視鏡手術に「精度」というさらなる武器が加わります。
出典:「メディカルノート」